旅立ちの始まり 13


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時は人類が宇宙開拓時代を迎えた未来の世界。『ストーリーの作り方』の著者が、未来に生きるSF作家の姿を借りて贈る、著者ならではのメイキング解説を練り込んだSFパロディー。いま、人類が宇宙進出に至った知られざる真実が明かされる。


家に電話しよう

作者:野村カイリ


3年が経ったころウッチャンは家に帰りたいと言い出した。日本語以外の言語を習得するために1本の映画を見た数日後のことだった。 曽祖父と仲間のUFO愛好家は話し合った。こうも長くなると保護は幽閉と変わらなくなってしまう。ウッチャンはウッチャンのしたいようにしたほうがいい。帰りそびれたE.T.は帰るべきだ。曽祖父は仲間の顔を見回して言った。

「家に電話しよう。そして迎えに来てもらおう」

 部屋のあちこちで鼻をすすり上げる音が聞こえてきた。

ウッチャンを帰すことが決まった以上は、戦略を立てなければならない。存在が知られたならウッチャンは必ず人類に幽閉されてしまう。相手に主導権を握られてはどんな扱いを受けるか分からない。ウッチャンが主導権を握られる形で出ていかなければならない。

ウッチャンは科学者だった。地球でいえば機械工学、電子工学、応用物理……。対象が複合的で相当するものがない。とにかく科学者だった。そこで、
ウッチャンが地球に永住したいと望んでいることにし、ついては彼らの高度な知識と技術を伝授する代わりに地球の永住権を求める。そう取引を持ちかけることにした。

まずはプライバシーの確保された家と専用の研究棟を支給してもらう。恐らく宇宙船の通信機能は失われているだろう。また警戒されて自由に使わせてはもらえまい。だから技術を伝えながら、専門外の分野を勉強すると称して自身の研究室で通信装置を組み立てる。帰りたいとは一言も言わない。地球への永住を求めているのだ から連中も少しは油断するだろう。それでも爆弾でも作らないかと警戒するだろうから、時間はゆっくりとかけたほうがよい。一方でマスコミを通してウッチャンには人気者になってもらう。民衆の反感を恐れておいそれとは手出し出来ないようにするのだ……。対策はこまごまとしたところまで立てられた。UFO愛好会の会員たちは、会員全員の立場と能力をフルに使って、何年かかろうとも「ウッチャンを故郷に帰す」と決めていた。