旅立ちの始まり 5


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時は人類が宇宙開拓時代を迎えた未来の世界。『ストーリーの作り方』の著者が、未来に生きるSF作家の姿を借りて贈る、著者ならではのメイキング解説を練り込んだSFパロディー。いま、人類が宇宙進出に至った知られざる真実が明かされる。



コンタクト失敗

作者:野村カイリ


「降伏だ」

人類の大方の腹が決まったのは巨大宇宙船の攻撃が始まって早くも4日目のことだった。 わずかそれまでの間に主要国の首都は瓦礫の野となっていた。近代的な軍隊を使い切り、残っているのは敵戦力と比べれば竹槍部隊のごときものである。降伏するしかないではないか。だが、その意見が対策会議で提案されるまでにはさらに3日を要した。徹底抗戦を主張する強行派が全て宇宙船のベタな怪光線の餌食となるまで、誰ひとり言い出せなかったのである。その間にも攻撃がつづき、被害が拡大したのは言うまでもない。

降伏が提案と同時に決定するや、ただちに降伏のメッセージが電波に乗せて送られた。だが攻撃はやまない。 
世界中の言語でメッセージを送る。すでに失われている言語やモールス信号でもやってみた。やはり攻撃は止まらない。地球外知的生命体との接触(コンタクト)では、意思疎通(コミュニケーション)をする手立てが最初の障害となる。

言語だけでなく、考えつくありとあらゆる平和的なイメージを、ありとあらゆるコミュニケーション手段を用いて伝えた。クジラが仲間を呼ぶときに出す鳴き声、猫が喉を鳴らす音、平和運動を象徴するあの歌この歌、赤ちゃんの笑い顔、かつてのSF映画に登場した「ピン・ポン・パン・ポン・パーン」の短い旋律。だが攻撃は止まらなかった。 
白旗を掲げた特使を送り出してもみた。だが怪光線でたちまち蒸発してしまった。 
決死隊が、傍目にはタコ踊りにしか見えないボディランゲージで伝えようともした。しかしやはり蒸発。
民間の力にも頼った。

「ベントラ、ベントラ……」

 たちまち蒸発。

 なにをしても攻撃はやまなかった。人類は降伏することさえ出来なかった。