旅立ちの始まり 11


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時は人類が宇宙開拓時代を迎えた未来の世界。『ストーリーの作り方』の著者が、未来に生きるSF作家の姿を借りて贈る、著者ならではのメイキング解説を練り込んだSFパロディー。いま、人類が宇宙進出に至った知られざる真実が明かされる。


ウは宇宙人のウ

作者:野村カイリ


命を取り留めても曽祖父はエイリアンをかくまいつづけた。生きていることを公表すればどのような目にあうか分かったものではない。研究対象とされて検査とは名ばかりの実験と拷問を受けるだろう。そして用が済めば戦争犯罪人として一生閉じ込められる。処刑されることだってある。

曽祖父は3年にわたってエイリアンと生活を共にした。UFO愛好会の会員たちは「ウッチャン」(ウは宇宙人のウ)と呼び、研究対象とすることなく友人として接し、2人の生活を支援した。

長い時間を共にするなかで互いの理解は進み、ウッチャンは日本語を話せるまでになった。逆に曽祖父もエイリアン語を覚えた、と言いたいところだが人類には発音が難しくて話すのは至難の業だった(発声器官の微妙なちがいもある)。それでも、聞き取ることは多少は出来るようになった。
日本語の会話が出来るようになったある日、曽祖父は本当の名前を聞いてみた。いまとなっては、勝手に名づけた愛称で呼ぶのは失礼に思えたのだ。エイリアンはユージンと名乗った。日本語の「友人」のことらしい。ウッチャンが曾祖父たちに抱いていだ感情が伝わってくる。会員たちとて同じ思いだった。会員たちは感動し、人類には本名の発音が難し過ぎることもあって、それが地球名ということになった。だが本人の希望で普段はウッチャンのままとなった。
名前を付けるのは難しい。迷いに迷う。作中人物であっても同じだ。