旅立ちの始まり 8


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時は人類が宇宙開拓時代を迎えた未来の世界。『ストーリーの作り方』の著者が、未来に生きるSF作家の姿を借りて贈る、著者ならではのメイキング解説を練り込んだSFパロディー。いま、人類が宇宙進出に至った知られざる真実が明かされる。


思いがけないしあわせ

作者:野村カイリ


持ち帰った検体により、エイリアンたちがインフルエンザにかかっていたことが確認された。当時の日本人はこの思いがけない僥倖を「神風邪」と呼んだ。この命名は世界的にはスルーされている。

国力がガタ落ちだった日本国には別の僥倖がもたらされた。多大な犠牲があったとは言え、巨大宇宙船を得たのだ。犠牲を考えればとうてい僥倖だと喜ぶわけにはいかない。それでも為政者は算盤をはじくのだった。
宇宙船は人類が持ち得ない超文明の技術の固まりだった。これを独占できれば、日本はどん底に落ち込んだ国力、国威をV字回復できる。

政府は慌てて指揮系統を回復させると、宇宙船墜落3日後になってようやく特殊部隊を墜落地点に派遣した。勝手に入り込んでいた民間人を排除するとともに宇宙船を確保。ただちに内部の様子が報告された。翌日には同盟軍の部隊がやってきて、強引に調査・警備に割り込んできた。しかし、さすがに先着の日本部隊をないがしろにすることはできなかった。日本政府はかろうじて間に合った感がある。

数週間後、エイタックの戦後処理を話し合う国際会議が開催された。日本国政府の特使は堂々と胸を張って主張した。

「本来の所有者がいなくなり、その資産が日本の領土にある以上は、日本国に所有権が移ったと考えるべきです。日本国は宇宙船の所有権を主張いたします」