旅立ちの始まり 14(Fin)


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時は人類が宇宙開拓時代を迎えた未来の世界。『ストーリーの作り方』の著者が、未来に生きるSF作家の姿を借りて贈る、著者ならではのメイキング解説を練り込んだSFパロディー。いま、人類が宇宙進出に至った知られざる真実が明かされる。


宇宙開拓時代の幕開け

作者:野村カイリ


結局のところウッチャンは帰ることが出来なかった。いや帰らなかったのかも知れない。そのあたりのことはよくわからない。曽祖父はウッチャンが外の世界に出てから2年して病死してしまった。だからその辺りのことを書いた日記はもちろん、記録めいたものは遺っていない。

計画通りには人類をだませなかったのか、故郷の星に通信出来はしたがなにかの事情で迎えが来なかったのか。それとも外の世界に出てあらためて地球で暮らすほうがよいと思うようになったのか。想像は尽きない。

ウッチャンはその後も四半世紀ほど生きて死んだ。亡骸は曽祖父の横に眠っている。

生きている間、ウッチャンは彼の文明が持っていた技術を地球人に伝えつづけた。たとえば重力を作り出す技術、磁場を作り出す技術、有害な宇宙線を遮断する技術、宇宙空間で健康を保つ技術、そしてほかの惑星系へと短期日で航行する技術である。いずれも地球人類が生み出すことができないか、生み出すまでには、はるかに多くの年月を要するものばかりである。かくして地球人類は宇宙開拓時代を迎えるに至ったのである。  そしていま、わたしは火星に来ている。 ……仕事を探しに来ている。 なにも火星にまで食い扶持を求めに来ることはない、と思うかも知れない。実はここだけの話、宇宙での見聞を元にSF小説を書くつもりでいる。宇宙には血沸き肉躍る冒険のネタがあふれている。そこに少しばかりの脚色と演出を加え、読者の皆さんにお届けするのだ。

さあ、始めよう。まずは、とりもなおさず仕事を見つけに出かけるとしよう。