食事のお供だけじゃない! 古代ビールの歴史と意外な活用法

古代ビール_歴史

飲み会に行けば「とりあえずビール」という表現があるくらい、ビールは私達の生活の中で日常的によく飲まれています。では、ビールはいつ頃誕生した飲み物なのでしょうか?
実は、紀元前のはるか昔から存在しているのです。
『図解 食の歴史』(高平鳴海 著)は「食事」に関心をお持ちの方に向けた解説書として、主にヨーロッパを中心とした食べ物・飲み物の歴史を幅広く紹介しています。
今回はその中から、古代の食文化の一例として、歴史に登場する古代ビールの一例やその思わぬ活用法を取り上げ、現代のビールとの違いを探ってまいります。

目次

ビールの歴史①『ギルガメシュ叙事詩』にも登場した

『ギルガメシュ叙事詩』では、ギルガメシュの親友となる野人エンキドゥが「当初はパンの食べ方やビールの飲み方を知らず」と未開人ぶりを描写されている。生水を飲むのかビールを飲むのかが未開人と文明人の差だったのである。『図解 食の歴史』p.26
ギルガメシュの名は数々の創作物のモチーフにもなっていますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
『ギルガメシュ叙事詩』はシュメール時代のメソポタミアで誕生した叙事詩で、現存する世界最古の文学のひとつとされています。シュメールの都市国家ウルクに実在したとされる王ギルガメシュが、粘土から造られた野人エンキドゥと様々な冒険を繰り広げるという内容です。物語の中で野人エンキドゥはパンとビールを与えられますが、当初はそれが何かわからず、教えられてやっと食べ物だと理解します。
このように、ビールは古代メソポタミアの地ではすでに一般的な飲み物で、文明の象徴とも言える存在でした。
また人々の間ではビールは神からの贈り物と言い伝えられていた。『図解 食の歴史』p.26
当時、ビールはシカルと呼ばれ、農業の女神ニン・ハラに捧げられた他、現物支給の給料としても利用されていました。古代メソポタミアでは数十種類のビールが作られ、材料や製法などによりそれぞれ異なる名称で呼ばれていました。こうしたビール文化は後のバビロニアへと受け継がれていきます。

古代ビール_歴史2

ビールの歴史②古代エジプトでは食事の一部だった

ヘロドトスの著書や紀元前2500年ごろの現地の史料によれば、エジプトのピラミッド建設に駆り出された労働者には、報酬としてパンとビール、それにタマネギ、ニンニク、ニラ、ラディッシュなどが与えられた。『図解 食の歴史』p.42
古代エジプトの壁画にも、ビールを製造する様子が描かれています。
当時、ピラミッドの建設に従事した労働者達には報酬としてパンなどの食事と一緒にビールが振る舞われていました。
当時のビールにはまだホップが使用されておらず、製法も味も現代とは大きく異なっていました。砕いたパンを水に浸して放置するなどの方法で、麦芽酵素を自然発酵させ、ビールを作っていたといわれています。このように、当時のビールはパンから作られていましたので、ビールは飲み物ではなく食事の一種だったとも言えるでしょう。パンとビールは古代エジプトの大切な主食だったのです。

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ビールの歴史③薬としても使われた! 意外な活用法

古代メソポタミアやエジプトでは、ビールはただの飲み物ではなく、薬の材料としても使われていました。パピルスに残された記録によると、ビールにタマネギやオリーブ、干しブドウ、ハチミツなどを混ぜることで、便秘薬、胃腸薬、食欲増進剤など色々な効能が生まれると信じられていました。
ビール単独だけでも鎮静剤、胃腸薬、強壮剤、腫れ物を治す塗り薬になった。『図解 食の歴史』p.26
また、ビールはそれ自体も薬効があるとされていました。飲み薬としてだけではなく、塗り薬や湿布薬としても活用されていたのです。ビールだけでなく、発酵の後に残ったビールかすもまた薬として使われていたようです。

ビールの歴史④ハンムラビ法典のビールにまつわる規定

ハンムラビ法典では居酒屋の女主人に関する規定に4項目も割いている。『図解 食の歴史』p.28
紀元前1800年代に入りシュメールからバビロニアへと時代が変わっても、ビールは変わらず人々に愛飲されていました。この時代には「目には目を、歯には歯を」で有名なハンムラビ法典が制定されましたが、その中には居酒屋の女主人に関する規定も残されています。元々ビールは各家庭で作られていたため、居酒屋でお酒が売られるようになってからも、店主は女性ということが多かったようです。

ハンムラビ法典の規定には、例えばビールを少なく注いだり薄めたりしたら店の主人は水の中に投げ込まれるというものや、店内で客が犯罪の計画などの相談しているのを見つけた場合、店主がそれを通報しなければ死罪になるというものなどがありました。これらの規定からは、当時の居酒屋が重要な場所と見なされていたことがうかがえます。

このように、ビールはシュメール(メソポタミア)、古代エジプト、バビロニアなど古代の食文化の一部として存在していました。ホップを使う現代とは大きく製造方法は異なりますが、広く庶民に愛され、親しまれていたことに変わりはないと言えるでしょう。
ビールはその後、エジプトからギリシャ、ローマへと広まり、やがて現代と同じようなホップを使った製法が発明されました。本書の第2章、第3章ではその歴史的な流れや、ワインなどの他の飲料についても詳しく解説しています。

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本書で紹介している明日使える知識

  • 中東の古代人を支えたナツメヤシ
  • かまど登場以前の調理事情
  • 医療にも使われたエジプトのパン
  • ピラミッドを造り上げたタマネギ
  • 岩塩の方が海の塩より高級品
  • etc... 

ライターからひとこと

ビールといえば、仕事の後の疲れを吹き飛ばす一杯というイメージがありますが、それは遠く紀元前の頃から変わらないのかもしれません。ピラミッド建設の現場でくたくたに疲れた後に飲むビールは、現代と味が違うとはいえ格別のものだったことでしょう。
本書ではビール以外にも様々な食事や食材を取り上げ、その歴史や意外な活用方法を紹介しています。教科書で習った西洋古代の歴史文化を「食事」という視点から見つめ直すことで、新しい発見ができそうです。食事の席で料理や飲み物をいただきながら、その歴史を語れたら素敵だと思いませんか。

『図解 食の歴史』の関連項目を限定公開! (2017年6月12日~2017年6月30日)