マグロの塩焼きにパン、ワイン 古代ギリシャの食文化とは

食文化_ギリシャ

古代ギリシャといえば、ギリシャ神話や哲学、詩など、芸術文化が花開いた時代でしたが、食文化についてはどうでしょう? 以前、古代ローマで人気のあった肉料理についてご紹介しましたが、古代ギリシャでも同じように豪勢な食事を食べていたのでしょうか。 『図解 食の歴史』(高平鳴海 著)では、ギリシャやローマから中世・近代ヨーロッパに至るまでの食文化の変遷についてわかりやすく解説しています。今回はその中から、古代ギリシャ食文化がどのようなものだったかご紹介します。

目次

古代ギリシャの食文化①ナッツ・麦粥・パンの登場

現代のヨーロッパの食事というと、肉や魚のメイン料理と一緒にパンが出て来るイメージがあると思います。そこでまずは古代ギリシャでの穀物事情についてご紹介しましょう。 

古代ギリシャでは、パンは最初から食べられていたわけではなく、黎明期には、人々はブドウ、イチジク、ナツメヤシなどの乾燥果実やナッツなどを食べていました。こうした果実類は、生のまま食べ過ぎると水分が多すぎてお腹を壊してしまうため、干して乾燥させてから食べることが一般的でした。

やがて穀類が入手できるようになると、主食は乾燥果実やナッツから麦類へと変化します。 しかしギリシャは狭く、土地も痩せていたため、穀物の栽培にはあまり向いていません。代わりに行われていたのがオリーブやブドウなどの果樹栽培です。紀元前1000年頃になると交易が発達し、オリーブやワインを輸出し、麦などを輸入するようになります。
当時の人々は麦を粥にして食べていました。麦粥は主食としてギリシャ人に好まれ、以後長い間食べ続けられることになります。この他、豆類やゴマなども主食になりました。

紀元前5世紀になるとパン屋兼製粉屋が登場します。パン作りは古代メソポタミアで始まり、エジプトからギリシャへと伝えられたとされています。パンにまつわる技術はギリシャでさらに発展し、ひき臼が改良されてより細かい小麦粉を生産できるようになったり、ブドウ液を発酵させてパン生地に使用するようになるなどしました。小麦だけでなく大麦などを使ったパンや、ドライフルーツや蜂蜜を加えたパンも登場するなど、古代ギリシャでは実に70種類以上ものパンが作られていたといいます。
こうした製パン技術はその後、古代ローマへと伝えられていきます。

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古代ギリシャの食文化②肉・魚・野菜について

続いて肉と魚、野菜事情についてご紹介しましょう。

ギリシャの土地は狭いため、放牧地として使うだけの余裕はなく、当初は生け贄に捧げられた獣肉を食べる程度だったといいます。 しかし紀元前1000年頃からの交易の発達のおかげでギリシャは豊かになり、肉をよく食べるようになりました。当時のメニューには、豚、羊、ヤギ、牛といった家畜の串焼き、血入りソーセージ、臓物焼きなどがあり、これらのメニューは後のローマにも受け継がれていきます。

魚介類は交易が発達する前からよく食べられており、鮮度と産地が重要とされていました。
『食卓の賢人たち』という史料には、「マグロの塩焼き」「ウナギ蒸し焼き」「ブダイのチーズとオリーブ油焼き」など素朴でオシャレな魚料理レシピが載っている。 『図解 食の歴史』p.54
野菜はニンニク、タマネギ、クレソン、カブ、レタスなどがよく食べられており、当時の人々はこうした野菜でよくポタージュスープを作っていました。当時、食事は素手で食べられていましたが、汁物にはスプーンを使っていました。ピタゴラスの定理で有名な数学者のピタゴラスは菜食主義者で、レタスが好物だったといいます。
果物はメロン、ブドウ、リンゴ、梨、ザクロなどが食べられていました。

こうした肉、魚、野菜や果物の他、古代ギリシャの人々はチーズや蜂蜜もよく食べていました。蜂蜜は甘味料として使われた他、肉を漬ける際の保存や料理の煮汁にもなりました。

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古代ギリシャの食文化③飲み物とお酒

最後に、古代ギリシャの飲み物にはどんなものがあったのでしょう?

「キュケオン」は農民を中心によく飲まれていた清涼飲料水です。大麦のひき割り粉にミントを混ぜたもので、儀式の際にも用いられていました。
この他、「プティサネー」という大麦を煎じて作る飲料や、「メリドラトン」という水で薄めた蜂蜜も好まれていました。

お酒はワインがよく飲まれていましたが、その飲み方は現代とは大きく異なります。当時はワインをそのまま飲むことは野蛮とされ、水で割って薄めて飲むことが一般的でした。こうしたワインの飲み方は古代ギリシャだけではなく、ローマ時代にも受け継がれていきます。

このように、古代ギリシャの食事は、珍味が好まれ豪勢なものも多かった古代ローマの食事とは違い、もっとシンプルなものでした。しかし、古代ギリシャ食文化の中にはローマへと継承され、発展していったものが多くあります。ローマの食文化の源はギリシャにあったと言っても過言ではなさそうです。

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ライターからひとこと

先日、ギリシャ料理を食べに行ってきました。ムサカ(グラタンに似た料理)やサガナキ(チーズの鉄板焼き)、フェタチーズやオリーブの盛り合わせなど、日本では珍しい料理が多く、料理の世界の奥深さを感じました。
残念ながら現代のギリシャ料理は古代の味そのままではなく、歴史とともに各国から流入した料理が組み合わさってできたものも多いようです。本書ではギリシャ料理だけでなく、ヨーロッパ全体の食の歴史が解説されていますので、グルメ好きな方には特に面白く読めると思います。