これからはじめる! 「錬金術」超初心者入門

錬金術

錬金術、それは金を生み出す夢のような技術……。
しかし実際の錬金術師たちは、金銭欲のためだけにこの術を追求したのではありませんでした。もっと大きなもの、すなわち宇宙の叡智を解き明かそうとする、知的欲求のためだったのです。 今回は『魔術師の饗宴』(山北篤・怪兵隊 著)より、錬金術の基礎的な概要をご紹介します。

目次

そもそも錬金術とは? その目的は?

錬金術とは、物質の化学的変化を研究する自然学で、簡単にいえば、黄金を作り出す技術です。
とはいえ、錬金術師たちが見据えていたのは、経済的裕福ではありません。
物質とは何か? どのように構成されているのか? どうすれば変化するのか? また、作り出すことができるのか? そういったことの答えを導き出すのが、錬金術師たちの目的でした。

それは俯瞰してとらえれば、世界の成り立ちを追求するものでした。
世界中のすべてのものの本質を知り、宇宙の生成の秘密を知るための、知識と技術の追求だったのです。

ではなぜ、錬金術師たちは黄金を生み出そうとしていたのでしょうか? その答えは、彼らにとっての、黄金の特別な価値にありました。
金には不変性があり、その放つ光ゆえに神の物を作るに適した物質であるともいわれており、すべての金属の中で、金(または銀も含む)だけが完全な金属である、と考えられていたのです。 『魔術師の饗宴』p.156
だからこそ錬金術師は、自分の知識の証明のために、完璧なものとされる黄金を生み出そうとしていたのです。

その研究の過程で生まれた副産物もあります。
それこそが、燐や硝酸などの発見、実験器具の発達など、今に繋がる化学の進歩でした。 錬金術はファンタジー世界のものではなく、現代のわたしたちの生活にリアルに繋がっているというわけです。

代表的な錬金術師のひとりが、かの有名な、パラケルスス(1493〜1541年)です。彼は 錬金術を元にして万能な秘薬などを作り、医者としても功績を残したといわれています。

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発祥はエジプトか東洋か? 錬金術の歴史

錬金術の英訳は「Alchemy」で、その語源は「黒い土地」という意味を持ち、エジプトを指しているといわれています。
本書ではその発祥について、エジプト説と、東洋説が取り上げられています。 まずエジプト発祥説ですが、エジプトの神官のみが知っていた聖なる技術が、ギリシアに渡り、アリストテレスの哲学に影響を受けて、初期の錬金術の理論が成立したといわれています。

一方、東洋発祥説では、東洋には紀元前4000年以上も前から錬金術が存在するとされ、その後、道教の思想に取り込まれて、陰陽の相互作用が5つの元素(水・火・木・金・土)を生み、これらが万物を形作るという考えになりました。
いわゆるこの「陰陽五行説」は、日本の陰陽道でもおなじみですね。
そしてこの錬金術がエジプトのアレキサンドリアに渡り、アラビアを経由して、西ヨーロッパに渡ったとされています。

12世紀になると、錬金術の守護神・ギリシア神話のヘルメス神の手によって書かれたとされる、とある文書が広まりました。
この文書には錬金術の秘法が記されていて、宝石のエメラルドの板に刻まれていたとされることから「エメラルド・タブレット」と呼ばれています。
ただしエメラルド・タブレットは秘法について直接的には書かれておらず 、その解釈は多くの錬金術師たちを悩ませました 。

ちなみにヘルメス神は、エジプト神話の知恵を司る「トート神」と同一視されており、やはりエジプトとの関わりは強そうです。

そして14〜16世紀のルネッサンス期に入ると、印刷技術の発達とともに書物が大量に流布され、いよいよ錬金術が流行していきます。

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錬金術の理論、基本的な考えとは?

錬金術の理論を理解するには、まずは「物質」の成り立ちからスタートしなければなりません。
ただしその解釈は、時代や錬金術師ごとに、さまざまなものがあります。

代表的な考えのひとつは、この世に一番最初にあった「第一物質」と、それに「性質を与えているもの(形相)」の2つが組み合わさって、すべての物質が作られている、というものです。

この考えは神話的なもので、神がこの世を創造したときには、金も銅も土も水もなく、ただ「混沌(カオス)」があり、これを「第一物質」と呼びました。
神はこの「第一物質」に、さまざまな異なる性格、つまり「形相」を与えて、いろいろな物質を作ったというのです。

これを元に考えると、錬金術の基本的な理論が見えてきます。

①まず物質に与えられている「形相」を取り除く
②「第一物質」に戻る
③再び新しい「形相」を与えてやる

以上のことができれば、物質の変換が可能になります。
つまり、鉛などから、金や銀を作るということができてしまうというわけです。

本書には、以下のような例が書かれています。
たとえば、バラの花を焼いて灰にしてしまったとしても、その灰の中にはバラの「形相」が残っているのです。 「形相」が残っているならば、バラの灰はバラの花に戻すことができる、といわれています。 『魔術師の饗宴』p.154
もちろん言うほど簡単なことではないのは当然ですが、記録によればパラケルススは、こういったことに成功していたということになりますから、錬金術師として後世まで名を残しているのも頷けますね。

なお、他にも物質の成り立ちについては、「4つの元素(土・火・水・空気)」と「4つの性質(乾・湿・冷・熱)」でできているという説もあります。
さらに「三原質(硫黄・水銀・塩)」で、物質の特性を表す考え方もあります。

以上、基礎的な錬金術の概要をご紹介しました。
こうして見てみると、冒頭でも書いたように、錬金術師たちは経済的裕福ではなく、世界の成り立ちの解明を追い求めていたことがわかります。
そして、この世で唯一神に相応しく、完全な金属である黄金を作りだすことこそが、知識の証明であるとするのにも納得できるのではないでしょうか。

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本書で紹介している明日使える知識

  • 呪術
  • カバラ
  • ヴードゥー教
  • ヨーガ
  • etc... 

ライターからひとこと

どこにでも悪い輩というのはいるもので、人をだまして金を巻き上げるため、あるいは泥棒や毒薬作りをする犯罪者が正体を隠すために錬金術師を名乗る不届き者もいたようです。
今回の記事はもちろんそんなニセモノではなく、志の高い、本物の錬金術師たちのことを前提にしています。なおこの概要で、「ちょっと厳しそうだぞ」と思った錬金術師志望の方がいらっしゃいましたら、本書を参考に、他の職業へのチャレンジを検討されてみてはいかがでしょうか。きっと楽しい魔術師の仕事が見つかりますよ。