肉・野菜・シチュー メソポタミアで食べたいごちそうとは

メソポタミア_食

メソポタミアの粘土板の中には、当時のレシピが残されているのをご存知ですか? 古代の人々の食事内容は失われてしまったものも多いですが、中にはこのように、時代を越えて記録が伝わっているものもいくつか存在します。
『図解 食の歴史』(高平鳴海 著)では、珍しいメニューやアルコール類といった食べ物・飲み物から、テーブルマナーの歴史まで、幅広く丁寧に紹介しています。今回はその中から、肉や野菜を使った料理に焦点をあて、メソポタミア食文化を考察していきます。

目次

メソポタミアの食①食肉の中心は羊・ヤギ

メソポタミアは農業が盛んではあったが、実は塩分が多くて農地に適さない荒れ地や休耕地が多くあった。そういう場所を利用して放牧が行われ、羊やヤギが飼育されていた。当時は肉といえば出てくるのはヤギか羊で、羊が最も美味な肉と考えられていた。 『図解 食の歴史』p.20
メソポタミアでは羊やヤギの他、牛や豚なども家畜として利用されていました。遺跡からはこれらの動物の骨が見つかっています。
ヤギ、羊や牛は、肉だけでなく乳や乳製品も料理に取り入れられていました。乳は腐りやすいこともあり、貴族など限られた人が口にしていたといいます。
豚肉も食べられてはいましたが、卑しい食べ物と考えられていました。牛は畑を耕すための家畜とされており、肉や乳を料理に使うこともありました。
鳥肉は初期にはウズラなどの野鳥や卵を狩っていたが、文明が発達するころには鶏が伝わってきて、食べるようになった。ガチョウやアヒルなどの水鳥、野鳩やキジバトなどもごちそうとして食卓に上った。 その他、狩りで得られた肉には鹿、トビネズミ、野ウサギなどがある。 『図解 食の歴史』p.20
このように、メソポタミアではさまざまな種類の動物の肉が食べられていましたが、馬や犬、蛇はタブーがあり、一般的に食べられることはありませんでした。

暑い日も多いメソポタミアでは、肉をできるだけ長く保存するために、いくつかの方法が考案されています。 記録によく登場するのは肉を塩漬けにするという方法です。その他、肉を薄くスライスして太陽の光やかまどの熱で乾燥させるといった保存方法も取り入れられていました。

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メソポタミアの食②野菜と果物、豆類

都市部を中心によく食べられていた野菜には、ネギ、タマネギ、ニンニクがありました。
現存する世界最古のレシピ粘土板、すなわちイェール大学に所蔵される3枚の粘土板の中で、1番目の粘土板にある20種の料理全てに、この3種の野菜のどれかが使われている。 『図解 食の歴史』p.22
この他、レタス、カブ、カボチャ、キュウリ、テンサイ、チコリーといった野菜も、ナツメヤシの木陰に作られた畑などで栽培されていました。また、レモン、イチジクなどの果実も利用され、生ジュースとして飲まれたり、乾燥果実はケーキの材料や甘味料として使われていました。穀類は小麦や大麦などの麦類が大規模生産され、パンなどの原料になっています。

しかし全ての人がこうした野菜・果物を食べられたわけではありません。都市に届く野菜は高価で、貧困層には手の届かないものもあります。貧しい人たちはヒヨコマメを中心とした豆類を潰し、パンのようにまとめて食べていました。

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メソポタミアの食③よく作られていた煮込み料理

では、ここまでにご紹介した肉や野菜はどのようにして食べられていたのでしょう?
先述のイェール大学が保管する3枚の粘土板には、40種類ほどの高級料理が記されています。これは紀元前1600年頃のもので、現存する世界最古のレシピとされているものです。この粘土板に載っている料理の中で数の多いものは、シチューのような煮込み料理でした。

煮込み料理には肉と野菜を入れたものや、野菜だけのものなどがありました。肉を使う場合は、脂肪をたっぷり溶かしたスープが好まれたといいます。野菜はネギ、タマネギ、ニンニクなどを中心に、カボチャやカブなども入れられていました。
煮込み料理の研究はかなり進んでいて、野菜を煮崩したり、パンくずでとろみを付けてポタージュのようにすることも流行った。 『図解 食の歴史』p.22
野菜や肉の他、麦粉を練ってゆでた団子や、獣の血などがスープに入れられることもありました。味付けには、コリアンダーやクミン、ミントなどを乾燥・粉末化させた香辛料などが利用されています。

このように、メソポタミアではさまざまな種類の肉や野菜が食べられていました。今回ご紹介した煮込み料理の他にも、肉を焼いたものや、いろいろな形をしたパンなど、さまざまなごちそうが食卓に並んでいたようです。

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本書で紹介している明日使える知識

  • 花冠を被って恋のまじないに興じる男たち
  • 暴君ネロも出入りしたローマの安食堂
  • 中世農家の日常メニュー
  • 宣伝工作によって英国に定着した紅茶
  • 評判がよかったユダヤの食肉
  • etc... 

ライターからひとこと

メソポタミアで食べられていた肉や野菜の多さには目を見張るものがあります。当時の粘土板には、まだ解読が進んでいないものも多いようですので、今後の研究が楽しみです。本書ではこの他にも、ギリシャやローマ時代のレシピについてもご紹介しています。本書を読めば、古代のグルメ通になれるかもしれません。