まずい料理と酒、壊血病でふらふら 大航海時代の食事とは

大航海時代_食事

大航海時代の船乗りたちはどんなものを食べていたと思いますか? 長期に渡る航海の中では、新鮮な肉や野菜どころか温かい食べ物を口にできる機会も限られており、船乗りたちはかなり苦労していたようです。
『図解 食の歴史』(高平鳴海 著)では、ヨーロッパを中心とした食事情について、古代から18~19世紀まで歴史にそって解説しています。今回はその中から、大航海時代の船上での食事についてご紹介します。


目次

船上の食事は保存がきくものが中心だった

15世紀頃の大航海時代に、船乗りたちが海の上で食べていた食事は、豆類、ビスケット(乾パン)、塩漬けの肉や魚、乾燥ニンニクなどが中心でした。
何か月にも及ぶ航海の中では生肉や魚、野菜などをそのまま積み込んでも腐ってしまうため、保存がきくよう塩漬けにして運ぶことが多かったのです。とはいえ、塩漬けにした肉なども長期間保存ができたわけではなく、航海が長くなると、船乗りたちは腐臭を放つ塩漬け肉を食べなければなりませんでした。

一方で、大型船などでは鶏や豚、牛、ヤギなどの生きた家畜を船倉に積み込むこともあります。実際に16世紀に世界一周に挑んだマゼランの船団では、こうした家畜やイチジク、チーズなどバラエティに富んだ食材を船に用意していました。このようなごちそうは、船体が大きく、またスポンサーがいたからこそ可能だったといえます。
船首には煮炊きのできるかまどがあり、塩漬けの肉や魚、豆などを煮込んだ料理を作ることができます。ただし、波がある時は船火事を警戒して火の使用は禁止されたため、このような温かい食事にありつけるのは、海が静かな時に限られていました。

ビスケットは長期保存ができますが、ひどく硬くてまずい上、ネズミに食い荒らされたり、ウジが湧いてしまうことも多かったといいます。そのため船乗りたちには人気がなく、他に食糧がない場合に仕方なく食べられていました。
航海が予想以上に長引き、船に積み込んだ食物が不足してくると、食事の内容はさらに悲惨なものとなります。ネズミの肉や腐った水、革や船の一部など、生き延びるために食べられるものは何でも食べなければなりませんでした。

また飲み物としては、真水はすぐに腐ってしまうため、航海中は主にビールやワインなどの酒を飲んでいます。 時代が少し下ると、サトウキビを原料としたラム酒も飲まれるようになりました。しかし、ある時このラム酒を何日分も一気に飲み干してしまった者がいたため、ラム酒を水で割って支給するようになります。これが、「グロッグ」という現代にも伝わるラム酒の水割りのはじまりです。また酒に酔ってふらふらの者を「グロッキー」といいますが、この「グロッグ」から生まれた言葉だとされています。

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食事で壊血病を乗り越えろ 船乗りたちの試行錯誤

このように、大航海時代の船上での食事はお世辞にも良いものだとはいえなかった上、船乗りたちは航海の途中で恐ろしい病気にかかることも多々ありました。それが壊血病です。
壊血病とは、ビタミンCの欠乏を原因とする病気だ。倦怠感と顔色の悪化に始まり、歯茎や口腔粘膜からの出血、皮膚内出血、手足のむくみが起き、最後は衰弱死する。 『図解 食の歴史』p.164
ビタミンCは野菜や果物、生肉などに含まれますが、何か月もの長期航海の中ではこれらの食物を口にできる機会は少なく、また当時は野菜を積極的に食べるという食習慣もありませんでした。
そのため大勢の船乗りが命を落としましたが、当時はビタミンC不足が原因とは分からなかったため、西欧では謎の病気として恐れられたといいます。

1753年、英国海軍省のジェームズ・リンドは、新鮮な野菜や果物を取ることで壊血病が防げることを発見しました。
同じく18世紀、英国の探検家キャプテン・クックは、史上初めて壊血病による死者を出さずに世界一周することに成功します。彼はザウアークラウト(千切りキャベツと塩などを発酵させた漬け物)を船に積み込み、乗組員たちに食べさせた他、麦芽汁、野菜を煮固めた固形スープなども航海に持ち込み、どれが効くのかを試したのです。
さらに18世紀末になると、英国海軍ではライムやレモンの果汁が軍艦に積まれるようになります。船乗りたちはこのようにして壊血病に備えるようになりました。
最終的に、壊血病がビタミンの欠乏で起こると証明されるのは20世紀に入ってからのことでした。

このように、大航海時代の船乗りたちは食事にかなりの苦労を強いられていました。船上での暮らしは海賊などの危険に加え、まずい食事や飢え、病気とも戦わなくてはならないハードなものだったのです。

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本書で紹介している明日使える知識

  • 中世の野菜泥棒は罪にならなかった
  • 食べないことで神に近づこうとした尼僧
  • 改革を進めた偉大な料理人たち
  • 食べないパンの皿トランショワール
  • 都市を食いつぶして進む軍隊
  • etc... 






ライターからひとこと

大航海時代の船乗りというと、荒くれ者の海の男たちが勇敢に戦ったり、未知なる大陸へと航海している様子を思い浮かべることが多いですが、活躍の影には食事や病気など、様々な苦労がありました。本書では図解入りで解説されていますので、読みやすく分かりやすいですよ。