「エロイム、エッサイム」も記された魔導書『黒い雌鳥』

黒い雌鳥

日本でもよく知られる呪文に「エロイム、エッサイム」があります。これは黒い雄鶏を使って悪魔を召喚し、黄金財宝を見つける儀式に使われる呪文であり、魔導書 『大奥義書』に説明があります。
そもそもこの儀式は「黒い雌鳥」と呼ばれる魔術の変形版で、もとの魔術は宝を発見する黒い雌鳥をつくりだすものでした。
『図解 魔導書』(草野巧 著)では、『ソロモン王の鍵』や『ネクロノミコン』など様々な魔導書を紹介しています。今回はその中から、魔導書『黒い雌鳥』についてお話します。

目次

トレジャーハンターたちに人気の『黒い雌鳥』

『黒い雌鳥』は1820年にフランスで出版されました。
この本の前書きには、ナポレオンのエジプト遠征に従った指揮官が書いたとされています。
ある時彼の軍は、アラブ人の軍に急襲されて指揮官以外が全滅してしまいます。唯一残された指揮官は、逃走中に、ピラミッドから現れた魔術師に出会いました。『黒い雌鳥』に書かれている内容は、この魔術師に教えてもらった魔術だというわけです。

『黒い雌鳥』は前半と後半に分かれています。前半には、四大元素の霊を呼び出す、安全に世界のどこにでも移動できる、透明人間になるなどの、様々な魔術的効果を持っている護符と指輪が紹介されています。
後半には、この世に隠された宝を発見してくれるという、黒い雄鶏の作り方が書かれています。この効果によって、『黒い雌鳥』はトレジャーハンターの間で人気となったのです。

黒い雌鳥2
◎関連記事
黒ミサ――欲望を満たすために行われた邪悪な儀式

黒い雌鳥の作り方と作るための条件

魔導書『黒い雌鳥』には、本能的に黄金や財宝を見つける黒い雌鳥の作り方が2通り書かれています。ひとつは不可能なほど困難なものですが、もうひとつは比較的一般的な方法で作ることができます。

まず術者は、正午の光に当てても全く汚れのない卵を見つけます。次に、できるだけ黒い雌鳥を選びます。もし別の色の羽根が混ざっていたら、引き抜いてしまいます。
その後、黒いフードを使用します。フードで嘴を除く雌鳥の頭を覆って、何も見えない状態をつくるわけです。更に黒い素材で裏打ちされた箱に雌鳥を入れ、光が差し込まないような部屋へと置きます。
餌も夜だけ与え、雑音で雌鳥が驚かないように注意する必要があります。雌鳥に黒だけを意識させた状態にし、卵を抱かせるのです。
こうすることで、卵は完全に黒に洗脳されます。生まれてくるヒナも真っ黒な雌鳥になるのです。この雌鳥が通常サイズまで成長すると、本能から隠された財宝や黄金を見つけてくれます。

簡単そうにも見えるこの方法ですが、実践者は十分な賢明さと徳を持っていなければならないという条件があります。またゾロアスター教の教祖であるゾロアスターの父にあたるオロマシスが、このような鶏を所持していた最初の人物です。

黒い雌鳥を使った悪魔召喚で大金持ちに

黒い雌鳥を使った方法は、魔術書『黒い雌鳥』に書かれている方法だけではなく、特別バージョンの魔術書『大奥義書』にも説明されています。こちらでは雌鳥が黄金を見つけるのではなく、雌鳥を使うことで悪魔を召喚し、その悪魔に命じて黄金財宝を手に入れる方法です。

まず、雄鶏と交わったことがなく、卵を産んだこともない黒い雌鳥を見つけます。次に鳴かせることなく雌鳥を捕まえます。この雌鳥を持って、広い本街道と別の道が交差する十字路まで行きます。
この十字路で、真夜中にイトスギの棒で魔法円を描きます。術者はこの真中に立ち、持ってきた雌鳥を2つに引き裂き、呪文を3回繰り返します。この時に使われる呪文が「エロイム、エッサイム、我は求め、訴えたり」です。
東を向き、ひざまずき、呪文を唱え、偉大な名前で終わらせます。これで、朱色の陣羽織と黄色のベストを着て、薄緑色のひざ丈ズボンをはいた悪魔が出現します。頭は犬、耳はロバ、足は子牛のような、2本の角のある悪魔です。
この悪魔が、術者の望みを聞いてきます。悪魔は命令に反することができないため、大金持ちになることができるわけです。

こちらの方法でも条件があります。術者の魂が瞑想的かつ献身的であり、意識も澄んでいなければなりません。もし条件を満たしていなければ、術者は悪魔に命令することができず、代わりに悪魔の方が術者に命令することが可能となります。

黒い雌鳥3
◎関連記事
手書き写本で魔力を得る! 魔導書の秘密
魔術師の教科書! 魔導書を利用していたのはどんな人?


本書で紹介している明日使える知識

  • エノク
  • モーセ
  • 栄光の手
  • アレイスター・クロウリー
  • サタンの聖書
  • etc... 








ライターからひとこと

今回お話した黒い雌鳥の儀式ですが、広く知られており、実際に事件にもなっています。1775年にワイン業者であるジャン・ギラリーが「黒い雌鳥が手に入る」といって、大金を撒き上げるという詐欺を働いたのです。犯人たちは手品のような方法で、1度黒い雌鳥を出現させることで被害者たちの信頼を勝ち取り、更に大金を出させます。
その後、この事件は裁判が行われました。ジャンと共犯者たちは鞭打ちにされた挙句焼印を押され、国外に追放されています。