愛の花! 妖精のゆりかご「チューリップ」の花言葉と経済への影響

チューリップ

チューリップといえば童謡でもお馴染みで、われわれ日本人にとっても身近な花ですよね。いちどは小学校や幼稚園などで、育てた経験がある方も多いのではないでしょうか。 今回は『花の神話』(秦寛博 著)より、そんなチューリップにまつわる伝説や、花言葉などをご紹介します。

目次

名前の由来はターバン? チューリップの花言葉など

長崎のテーマパークでも馴染みがあるように、チューリップといえばオランダのイメージがありますよね。
実はヨーロッパに持ち込まれたのは16世紀で、もともとはオスマン・トルコ帝国で園芸品種として栽培された花でした。

当時の神聖ローマ帝国のトルコ大使は、咲き乱れるチューリップの花に感動して、「この花はなにか?」と尋ねます。
それに対してトルコ人が「ツルバン(Tulipant)に似ている)」と答えたのを勘違いし、「トルコにはチューリバンという花がある」と知らせました。これがチューリップの名前の由来です。
現在は中央アジアを中心に、東アジアから北アフリカにかけて分布しています。
フルーツに似た甘い香りがしますが、一部の品種を除いて香りが非常に薄いため、基本的には見た目を楽しみます。

 日本には19世紀に渡ってきました。 当時はサフランの漢名である「鬱金香(うっこんこう)」と呼ばれ、花の形が似ていたことから間違われてしまったようです。
しかし一説によれば、最初に伝来したのが黄花チューリップだったため、ウコン色の花という意味でそう呼ばれたとも言われています。
また、牡丹のように大きく華麗なユリという意味で、「ボタンユリ」とも呼ばれていました。

 チューリップ全般の花言葉は「博愛」、「思いやり」ですが、色によってはその意味を大きく変えてしまいます。

 【チューリップ花言葉
 ・赤:愛の告白
 ・紫:永遠の愛
 ・黄:望みなき愛
 ・白:失恋

 チューリップが愛の花であるのは間違いないですが、黄色と白の花を持って愛の告白をするのは、絶対に避けなければいけませんね。


チューリップ2
◎関連記事
ケルベロスの涎から生まれた? 紫の毒の花「トリカブト」
古代の人々から愛された睡れる花、スイレンの伝説

妖精の子どもが眠る! チューリップのゆりかご

いくつかあるチューリップにまつわる伝説のなかでも、今回はひときわ愛らしい妖精のお話をご紹介します。
イギリスのデヴォン地方では、ゆりかごを持っていない妖精は、夜になるとチューリップの花に子どもを入れて、風に揺らしてあやすといわれています。
昔、ある婦人が夜中に庭を出て、チューリップの花の中に、ちいさな赤ん坊が眠っているのを見つけました。 彼女はその愛らしさに大変喜んで、さらにたくさんのチューリップを植えました。
おかげでそのあたりの妖精たちは、みんなチューリップのゆりかごを使うことができるようになりました。

初めは用心していた妖精たちですが、ただ嬉しそうに眺めるだけの婦人を見て、それが善意であること知ります。
そして妖精たちは婦人とその家に祝福を与え、婦人は末永く幸福に暮らしたのでした。

ところが婦人が亡くなったあと、その家には冷酷な蓄財家が住むようになります。
蓄財家は美しいだけのチューリップを引き抜いて、食用になるパセリを植えます。

子どものゆりかごと婦人との思い出を奪われて怒った妖精たちは、夜になるたびに畑で踊りを踊って踏み荒らし、根を引きちぎり、花には泥を投げ込みました。
そのために庭ではどんな植物も栄えず、パセリも今日見かけるような、ギザギザの葉になったのでした。

以上が伝説のお話です。 デンマークのアンデルセン童話で有名な「おやゆび姫」も、チューリップから生まれたちいさな姫君の物語です。
きっとどこの国でも、チューリップには妖精が眠っているのでしょうね。

チューリップ3
◎関連記事
勝利の花アイリスと、キリスト教の密接な関係

経済に芸術に!「チューリップ狂」のさまざまな影響

さて、見た目の可愛いチューリップですが、実は食用にもされています。

名産地であるオランダでは、第二次世界大戦後の深刻な食糧不足の際、チューリップ畑に残された球根が国を救いました。
それ以前からも、球根は砂糖漬けのお菓子として食べられていましたが、現在でもクッキーやケーキの素材にされたり、花びらのジャムが作られたりと、チューリップは食用としても愛されています。

そもそもオランダでチューリップが人気になったのは、オランダがアジアとの貿易で大いに潤っていた、1620年ごろに端を発します。
ヨーロッパで人気の高まっていたチューリップは、オランダを中心に上流階級でもてはやされはじめ、珍しい花をつける球根は法外な高値で取引されたり、投機の対象とされたりするようになりました。

このチューリップ・バブルについて、本書ではこのように書いています。
一六三四年から始まった“チューリップ狂(Tulipomania)時代”には、球根が馬車二台分の小麦や牝牛四頭などと交換され、珍種であれば五千ギルダーを超える価格がつきました。これは当時の大工の二年分の収入に近い額です。 『花の神話』p.143
このバブルでは、巨万の富を築いた人もいましたが、逆に破産した人も多発し、オランダの経済は大混乱しました。
その後オランダ政府は、1637年にチューリップの投機取引を全面禁止にしたのでした。 

しかし、さまざまな花をつけるチューリップ、現在でも珍種に破格の値段がつけられることは変わりありません。

この「チューリップ狂時代」は、さまざまな芸術作品にも影響を与えています。
アレクサンドル・デュマの小説『黒いチューリップ:La Turipe Noire』は、黒いチューリップにかけられた賞金を巡って起きる争いが描かれています。

また、この小説を原作としたアラン・ドロン主演の同名の映画もあり、さらにこの映画の影響を受けた日本の森村あすかの漫画『ラ・セーヌの星』にも、「黒いチューリップ」というヒーローが登場します。
他にも当時のオランダで活躍した画家ヤン・ブリューゲルなどは、絵画の題材として、チューリップをよく取り上げています。

 ひとつの花人気の影響力は計り知れませんね。
以上、チューリップについてのご紹介でした。

チューリップ4


本書で紹介している明日使える知識

  • 牡丹
  • フジ
  • スズラン
  • ヒヤシンス
  • etc... 

ライターからひとこと

愛らしい姿から平和の象徴のように感じられるチューリップですが、まさかバブルや争いにまで発展した過去があったとは驚きですね。
なお食用についてはきちんと調査して、適切なものを探すほうがいいでしょう。
本書にはチューリップ以外にも、さまざまな花の伝承や由来、エピソードが掲載されています。意外な歴史を知ることができて面白いですよ。