第二次世界大戦の幕開け、当時最強を誇った戦車戦術「電撃戦」

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電撃戦」とは、第二次世界大戦でドイツ軍が採用した戦術のひとつです。ドイツ軍は、この電撃戦を駆使して1939年9月に隣国であるポーランドに侵攻しました。これが第二次世界大戦の始まりです。
では、電撃戦とは一体どのような戦術なのでしょうか。
『図解 戦車』(大波篤司 著) では戦車を使った戦術のひとつとして、電撃戦の陣形や目的、電撃戦のもたらした効果など、電撃戦に関する情報を幅広く解説しています。
今回は、戦車を中核とした電撃戦の中でも、実際に第二次世界大戦で行われた例をもとに、「何故ドイツが大戦初期に快進撃を展開できたのか」を紹介します。

目次

「スピード」だけでは語れない、電撃戦の本質

電撃戦といえば機動力、あるいはスピードだと思っている方も少なくないかもしれません。実際、機動力を駆使した戦術ではあります。
しかし、電撃戦は「スピード勝負」というほど単純なものではなく、次のような効果を得ることを目的にしていました。
敵軍に緒戦のショックから回復するヒマを与えず、指揮系統に重大なダメージを与えることである。『図解 戦車』p.24
部隊の中核には戦車が存在し、戦車の突破力を生かして敵陣地や敵都市などの拠点を目標にします。

もう少し詳しく説明すると、電撃戦は大きく3つの段階に分かれます。
第一段階では、爆撃機によるピンポイント爆撃や落下傘部隊による撹乱を行います。この段階では、まだ戦車は登場しません。
戦車が活躍するのは、都市・拠点攻撃を行う第二段階です。混乱し、孤立した敵部隊の中を、軽戦車の機動力を生かして一気に突破します。この第二段階だけを見れば、電撃戦は機動力を駆使した戦術といえるでしょう。

しかし、電撃戦の本質は、第一段階の撹乱から間を置かずに第二段階に移行することで、敵に現在状況を把握させないところにあります。
そして敵拠点を攻略後の第三段階では、歩兵部隊は拠点を占拠、戦車部隊はそのまま前進、と役割を分担します。敵の通信や補給を麻痺させ、一気に撤退か降伏かまで追い込む。これが電撃戦の本質です。

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ドイツ軍の電撃戦が効果的だった背景とは

第二次世界大戦が始まった頃の戦いでは、陣地なり都市なりの拠点をめぐって両軍が長時間ぶつかり合うのが普通であった。『図解 戦車』p.24
ドイツ軍の電撃戦が功を奏し、ポーランド、フランスまで侵略成功した背景には2つの理由があります。
ひとつは、電撃戦の戦い方が当時主流だった戦い方とあまりにも違ったため。当時の主流は、拠点を中心に両軍が攻防を繰り返す戦い方でした。そして、勝った場合は拠点の確保と補給などをしっかり行った上で、次の戦場へと向かいます。負けた場合も、勝った方が拠点を確保している間に撤退するのが普通でした。拠点確保を戦闘後の最重要事項とし、負けた方でさえも、勝った方の拠点確保を見越した上で行動していたわけです。
しかし、電撃戦では拠点の確保を歩兵に任せ、戦車部隊は敗残兵への追撃や戦線後方への攻撃を行います。そのため、負けた軍は十分な撤退準備ができず、戦線が崩壊してしまうのです。

電撃戦成功の理由2つ目は、戦車の使い方でした。第二次世界大戦の開戦当時、多くの国において、戦車はまだ歩兵の盾、歩兵の支援機という認識だったのです。そのため歩兵と戦車を切り分けて考えることは難しく、戦車を主力にすることや戦車で追撃することなどが理解できなかったと見られています。

(関連記事:戦車でドーバー海峡は越えられる? 水中走行の仕組み」)

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大戦初期のドイツ戦車は強かったのか

ドイツが第二次世界大戦の初期に快進撃を展開できた理由を説明しましたが、ここでひとつの疑問があります。
当時のドイツを勝利に導いた要素として、戦車の性能が他国よりも優れていたという事実はないのでしょうか。本書では、その答えにも触れています。
この大勝利にドイツ戦車軍団が大きな役割を果たしたのは紛れもない事実である。だが部隊を構成していたのは『ティーガー』や『パンター』というような巨大戦車の群れではなく、装甲車に毛の生えたようなレベルのものでしかなかった。『図解 戦車』p.22
ドイツと言えば戦車大国というイメージを持っている方もいるかもしれません。第二次世界大戦で活躍したドイツ戦車としては、Ⅳ号戦車やティーガーⅡなど拡張性や性能の高さが目立つものが挙げられます。こういった戦車を知っていれば、ドイツの電撃戦戦車の力で押し切ったものと考えてしまうこともあるでしょう。

しかし、開戦当時のドイツが最新鋭の戦車を揃えていたわけではありません。これには、「揃えるだけの余裕がなかった」というドイツ内部の事情もあるようです。
そのため、電撃戦第二段階にあたる拠点攻略において、ドイツ戦車は同格以上の戦車を装備していたイギリス・フランスの歩兵戦車(歩兵の支援を行う戦車)に苦戦したとも言われています。これら歩兵戦車に対し、ドイツは無線による連携や対戦車砲を駆使して対処しました。
つまり、ドイツの快進撃は戦車の力に依存したものではなく、電撃戦という戦術により支えられていたと言えます。

(関連記事:「人と機械の違い? あまり知られていない戦車独特の射撃法」)

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本書で紹介している明日使える知識

  • 戦車とはどのようなものか?
  • 最初の戦車は「陸上軍艦」だった?
  • 戦車の始祖はフランス製?
  • 戦車と呼ばれるのは何トンくらいから
  • 歩兵戦車ってどんな戦車
  • etc... 

ライターからひとこと

第二次世界大戦初期におけるドイツの電撃戦は、必ずしもドイツ戦車のカタログスペックに頼ったものではありません。当時の戦術、双方の彼我戦力を見極めた上で最も効率的な戦術として編み出されたものです。敵軍にも戦車はありますので、敵軍の戦車を倒すためにはどのような方法があるのか徹底的に議論されたのでしょう。
本書では、戦車歴史から戦車の分類、現代における戦車の役割など、様々な戦車の使い方が紹介されています。