人と機械の違い? あまり知られていない戦車独特の射撃法

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古来より射撃の優劣が戦場の行方を大きく左右してきました。遠間から攻撃を浴びせることのできる弓矢は近接武器に比べ射程が長く、数多くの戦果を挙げてきました。時代の流れとともに射撃の主役は弓矢から銃や砲へと変わりましたが、現代でも射撃が戦争における重要な要素のひとつであることに変わりはありません。
『図解 戦車』(大波 篤司 著)では戦車の射撃について、どのような仕組み、手順で行われているのか、人の射撃とはどのように異なるのかなどをさまざまな角度から紹介しています。
今回は戦車の攻撃力を支える射撃、射撃のために行われる工夫を中心に、人による射撃と戦車による射撃の違いという疑問について考えます。

目次


同時に搭載されている戦車の武装

戦車の武装の中でも重要なのが、敵戦車を破壊するための戦車砲である。『図解 戦車』p.46
戦車の強みのひとつとして、複数の武装を搭載できることが挙げられます。巨大な攻撃力を持つ戦車砲と近接攻撃用の機銃を敵や用途によって使い分けることで、戦闘における効率化を図っているわけです。

射撃の大きな欠点として、狙いを定めている時は無防備になりやすい点があります。戦車砲も同じで、砲自体の破壊力はあるものの、肉薄攻撃を仕掛けてくる歩兵に対して照準を合わせることは難しく、同時に砲弾にも限りがあります。仮に歩兵に対し照準を合わせることが可能であっても、すべての歩兵に対し戦車砲を使用していれば砲弾の方が先に底を尽くでしょう。

そこで、通常戦車には、戦車砲に加えて2挺から3挺の機銃を装備していることが基本となっています。戦車のような大きく、照準を合わせやすいものには戦車砲を、歩兵のような照準が合わせにくいものには機銃を使用するというように標的によって使い分けるのです。
複数の武装を容易に併用できるところが、人と機械の違いと言えるでしょう。


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高難易度となる移動と射撃の同時運用

戦争映画などでは戦車が荒れ地を激走しながら砲撃してくる場面があったりするが、本気で敵に当てようと思ったら射撃の際には停車するのが定石だ。『図解 戦車』p.74
移動しながら射撃をすれば命中率が下がるのは、人であっても戦車であっても変わりません。
そこで、移動と射撃を同時に行うわけではなく、走る、止まる、狙う、撃つ、再び走るというサイクルで移動と射撃を交互に行うことが基本となります。

しかし場合によっては、走りながら射撃しなければならないという状況も存在するでしょう。人の場合はこういう状況に陥ると移動と射撃を並行して行うのではなく、どちらか一方に集中するのではないでしょうか。
戦車であれば、補助的な装置をつけることで、ある程度は同時に行うことが可能になります。この装置をスタビライザーと言います。スタビライザーはもともと移動による揺れを抑えることを目的として使用されていましたが、現在では砲塔の向きや砲身の角度の調整も可能となり、命中率は低下するものの移動をしながらの砲撃もできるようになりました。このように、装置を付けることで欠点を補えるところは戦車の利点と言えます。

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車体を隠すために尾根を利用した射撃方法

稜線(起伏した地形の尾根部分)に車体を隠し、砲塔だけを出して射撃するのが稜線射撃である。戦争映画などでは丘の上に陣取った歩兵が身を隠しながら眼下の敵を攻撃するシーンあるが、考え方としてはそれに近い。『図解 戦車』p.68
射撃をする時に重要なことは、敵の弾に当たらず、こちらの攻撃を相手に命中させることです。
戦車部隊は少しでも被弾の危険を避け、命中率を上げるためにさまざまな工夫を凝らしています。

そのひとつが稜線射撃です。
この、本体を隠し必要な部位だけを出すというやり方は戦車だけに限ったことではなく、人による狙撃でも同様の工夫が行われています。人と戦車の類似点ということができるでしょう。

尾根が利用できない状況での窪地を利用した射撃方法

稜線を利用せずとも、自然の窪地や味方が掘った穴(戦車壕)に車体を隠すことを「ハルダウン」という。『図解 戦車』p.68
戦車はさまざまな地形に投入される兵器であるため、常に稜線を利用して戦えるとも限りません。そのような時に使う方法がハルダウンです。

しかし、戦車の車体が隠れるほどの窪地が存在しない場合もあります。通常は工作部隊の支援を受けますが、時には戦車乗り自身が穴を掘らねばならない時もあります。そのため戦車には、穴掘り用のスコップが搭載されています。
またハルダウンするだけではなく、車体を偽装網で覆ったり車体の色を周囲の自然と合わせたりと、さらなる工夫を重ねることもあります。
戦車は構造上、戦車砲を下に向けようとすると砲塔の天井にぶつかってしまうため、砲塔の小さい戦車は稜線射撃に向いていません。地形適応力の高い戦車ではありますが人に比べて射角に制限があることに気をつけてください。

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本書で紹介している明日使える知識

  • 戦車に搭載される武装とは?
  • 戦車砲ってどんな砲?
  • 口径と口径長は違う?
  • 砲身の形で命中率が変わる?
  • 戦車はどんな弾を撃つ?
  • etc... 

ライターからひとこと

地上では最も強い兵器に思える戦車ですが、欠点がないわけではありません。人と同じように、苦手とするものと得意とするものがあります。その欠点を補うために機銃のような副武装を搭載したり、スタビライザーのような補助的な装置を開発したりと工夫が重ねられたのだと思われます。
本書では戦車自体の工夫以外にも、砲塔や砲身、砲弾など細部に施された工夫や戦車乗り自身が行っている仕事や役割も紹介されています。

『図解 戦車』の関連項目を限定公開! (2017年6月15日~2017年6月30日)