神も人間も身勝手すぎる? 牡羊座と牡牛座の十二星座物語

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十二星座といえば、星座占いなどで身近な存在ですよね。しかしながら、それにまつわる神話については、あまり馴染みがない方もいるのではないでしょうか。 十二星座の物語を知ることで、自分の星座にもっと愛着を感じられるかもしれません。創作をしている方ならば、アイデアの一助となることもあるでしょう。
 今回は『星空の神々』(長島昌裕 著)の内容に沿って、十二星座の中から「牡羊座」と「牡牛座」の神話を繙いてみたいと思います。

目次

牡羊座と牡牛座、星になったギリシア神話の動物たち

古代から、星座は様々な神話と結びついてきました。
 古代ギリシア最大の天文学者であり、占星術者でもあったプトレマイオス・クラウディオスは、現在では全天に88個ある星座のうち、北天の48個の星座について著作『メガレ・シンタクシス』に記しています。 それらの星座は多くがギリシア神話と関わりをもっていて、十二星座の物語にも、ギリシアの神や英雄たちが登場しています。

その名の通り、牡羊座は羊に、牡牛座は牛にまつわる神話と結びついていますが、もちろんただの羊と牛ではありません。
彼らは一体何もので、一体どのような経緯で星になったのでしょうか。現代まで語り継がれるギリシア神話の一部には、その答えがあります。

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金色の羊が空を飛ぶ? 牡羊座の物語

牡羊座にまつわる神話は基本的にハッピーエンドで、羊の姿も美しく描写されています。
神話では、この羊はボイオーティアの王アタマースの二人の子ども、プリクソスとヘレーを救うため、大神ゼウスが遣わした金色の羊といわれている。 『星空の神々』p.46
ギリシア中部、ボイオーティア地方のアタマース王は、雲の精である妻ネペレーとの間にプリクソスとヘレーという兄妹をもうけていました。 その後、イーノーという後妻を迎えます。

しかし、イーノーはアタマース王との間に子供ができると、前妻の子である二人の兄妹を疎ましく思うようになりました。
イーノーの悪感情は日増しに強まっていき、ついにある年、彼女は二人を殺してしまおうと決意した。 『星空の神々』p.47
そして、イーノーの悪だくみが始まりました。 なんと、種蒔きの時期を狙って小麦の種籾に細工して、わざと、凶作引き起こしたのです。 何も知らない王は神頼みをするのですが、後妻の計画は実に巧妙でした。彼女の息がかかった使者は、王に嘘の神託を伝えます。
「プリクソスとヘレーの兄妹をゼウスへの生贄に捧げれば、凶作は止む」と。

アタマース王にとって、そんなことは本意ではありません。
しかし、後妻によって神託は民衆の知るところになり、王は二人の兄妹を生贄にすることに承諾せざるを得なくなります。 しかし、兄妹がゼウスの祭壇に連れていかれた後、あわやといったところで天駆ける金色の羊が二人を助け、遠くへ運び去ったのでした。
この奇跡を成し得たのは、二人の産みの母親であるネペレーであった。  自分の子どもの危機を知ったネペレーは、大神ゼウスに二人の助命を嘆願し、使者である伝令神ヘルメスを通して、天駆ける金毛の羊を受け取っていたのだ。 『星空の神々』p.48
残念ながら、妹のヘレーは空を飛んでいる間に羊の背から落ちてしまいましたが、兄のプリクソスは助かります。逃げ延びた先で、彼は自分の命を救ってくれた感謝をこめて、件の羊をゼウスの祭壇に捧げました。ゼウスがその羊を称えて天に昇らせたため、牡羊座が誕生したのです。

ゼウスへの生贄を逃がすために、ゼウスの使者に力を借りる 。
ゼウスが遣わした羊を 、またゼウスに捧げる。
ゼウスは捧げられた羊を、その功に報いるために天にあげる。

羊が行ったり来たりする様子が面白いですが、 登場人物は誰も疑問に思っていません。

牡羊座の元になった羊は、格好良く活躍させてもらえているし、美しい描写をしてもらえるしで、なかなかいいポジションです。 しかも、この物語の主要人物の 中で一人(一匹) だけ嫌な思いをしていません。 ゼウスに捧げられたとき、コルキスの王アイエーテースに献上するため皮をはがれされてしまいますが、その後星座として輝き続けられることに比べれば、まあ些細なことでしょう。

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あの怪物の父か、神の化身か。牡牛座の物語

牡牛座にまつわる神話にも、またまたゼウスが登場します。
彼とフェニキアの王女エウローペの間には三人の子供がいましたが、エウローペがクレタ王と結婚したことにより、彼らのうち誰がクレタ島の王位を継承するかが問題になりました。

息子ミノスは、神々は自分の望みを何でも叶えてくれるから、自分が王に相応しいと主張します。 その証拠として、海神ポセイドンに生贄用の牡牛を望み、その願いが叶えられたことによりミノスは王座を勝ち取るのでした。

しかし、ここから悲劇が始まります。驚くべきことに、ミノスは牛が見事だったためにそれを惜しみ、別の牛を生贄として捧げました。 約束を破ったミノスに対して、ポセイドンが怒るのも道理です。 ポセイドンはその力で、ミノスの妻パシパエが、自身が与えた牛に恋をするように操ってしまいます。 そしてパシパエは牛との間に子供を産みました。人間の体と牛の頭をもった怪物ミノタウロスです。

一説には、そのミノタウロスの父となった牛が牡牛座になったと言われています。 ちなみに、ミノタウロスは非常に凶暴だったため英雄テセウスに退治されてしまい、父である牛も、後にヘラクレスによって捕らえられてしまいます。 牡牛座になったと言われてはいますが、この牛はなかなかに不遇です。 牛自身は何も悪いことをしなかったにも関わらず、ミノスの出来心でとんでもない事態に巻き込まれてしまいました。

今回は、現代の日本でも比較的有名な怪物ミノタウロスが登場するほうの説を先に紹介しましたが、牡牛座の誕生には、もうひとつメジャーな説があります。

それは、ミノスたちが生まれる前、ゼウスとエウローペが出会った頃のお話です。
ゼウスは既婚者でしたが、恋多き神。ある日、フェニキアの地に好みの女性を見つけました。
それが、エウローペです。
エウローペの美しさに懸想したゼウスは、妻へーラーの目を逃れるため、一頭の牡牛に姿を変えてフェニキアへと降り立った。 『星空の神々』p.53
姿を変えてエウローペに近づいたゼウスは、彼女が背に乗るなり、突然海を渡り始めます。
やがて牡牛はクレタ島にたどり着いた。このときのゼウスの変身した牡牛の姿が星となり、牡牛座になったのだという。 『星空の神々』p.54
エウローペにとっては恐怖でしかなかったようですが、ゼウスの計画は成功です。しかし、その後に三人もの子供をもうけているわけですから、ゼウスの恋愛テクニックは相当なものだったのかもしれませんね。

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本書で紹介している明日使える知識

  • 卵から生まれた二人の勇士
  • 夫殺しの姉
  • 美少年アドニス
  • 竜の歯から生まれた戦士
  • 策略に長けた魔女
  • etc... 

ライターからひとこと

今回ご紹介した牡羊座牡牛座にまつわるお話は、本書に書かれている神話の内容を少しかいつまんだ程度のあらすじです。 本来の神話は、もう少し生々しかったり、続きがあったりします。 自分の属する星座にまつわるお話を、ぜひ読んでみてください。その星座の登場人物たちが素敵に書かれていると、なんだかうれしくなりますよ。