最低限の犠牲はつきもの? 意外と知らない特殊部隊とは

特殊部隊

争いがある以上、敵味方ともにある程度の犠牲は覚悟しなければなりません。特に現場での臨機応変な対応が要求される特殊部隊のような部隊では、過酷な訓練を受けてきた 隊員であっても命をかけなければならないような状況もあります。そのような生死に関わる現場で働く特殊部隊において、最低限の犠牲はどのように受け止められているのでしょうか 。
『図解 特殊部隊』(大波篤司 著)では、特殊部隊についてさまざまな視点から解説されています。今回は特殊部隊の中でも、部隊の存在意義に関わる「任務上やむを得ない犠牲への考え方」について紹介します。

目次

特殊部隊とは①部隊が生まれたいきさつって?

そもそも特殊部隊とはどのような部隊なのか?
特殊というからには「普通じゃない」部分があるのは当然ですが、実は、特殊部隊について明確な定義はありません。 近年、武装勢力の組織化や巨大化などにともない、従来の警察や軍隊では対処しきれないケースが増えつつあります。このような「特殊なケース」に「特殊な方法」で対応する部隊が特殊部隊なのです。

特殊部隊が投入される事態において重要となるのは、主導権の確保です。敵に主導権を握られ後手ばかりを踏んでいては、状況は改善されません。主導権を取り戻し、状況をコントロールしながら解決へと向かう必要があります。 そのため特殊部隊はパラシュートによる降下や潜水艇による水中からの侵入など、相手の想定していない方法を選ぶことがあります。敵の意表を突くことで、事態の主導権を握るチャンスが生まれるわけです。 このような通常の部隊では採用しにくい「特殊な方法」を選択するために、厳しい訓練を行い、各種技能を所持した特殊部隊が必要なのです。

現代的な特殊部隊が設置され始めたのは、第二次世界大戦中だと言われています。しかし大戦前にも、特殊部隊が必要となる「特殊なケース」が発生しなかったわけではありません。ではそのような時は、どのように対応していたのでしょうか。
現代から見ると非効率な方法に見えるかもしれませんが、特殊部隊が必要な状況に陥るたびに人員を召集していたと言われています。
最初のころは「特殊なケース」が発生するたびに、一般部隊からふさわしい技能を持った人員が召集され即席のチームを組んでいたが、やがて常設の部隊としてメンバーを囲い込む国が増えていった。 『図解 特殊部隊』p.8
特殊部隊を常設するメリットは、訓練の効率化や重要機密の保持にあります。必要に応じて召集解散を繰り返していては時間を無駄にしてしまいますし、情報の管理も行き届きません。こういった観点から、現在ではアメリカやイギリス、ロシアなど先進国と呼ばれる国の多くが複数の特殊部隊を常設しています。

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特殊部隊とは②実は大きく2種類に分けられる?

現代の特殊部隊は大きく2種類に分かれます。ひとつは軍隊あるいは軍隊に準じる組織に所属している「軍隊系」、もうひとつは警察などの治安維持を目的とした組織に所属している「警察系(治安系)」です。同じ特殊部隊であっても、所属している組織の違いによって任務の目的に大きな差があります。
しかし暴力組織である軍隊に作られた特殊部隊と、治安維持や法の執行を目的とした警察の特殊部隊との間には、大きな差異が存在する。任務に対するリスクの許容範囲だ。 『図解 特殊部隊』p.10
軍隊系の特殊部隊が優先する目的は国益の確保です。そのため軍隊系の特殊部隊の作戦には失敗が許されないものが多く、国際法が許す限り、解決に向けてあらゆる手段を講じます。一方で警察系の特殊部隊の目的は治安の維持です。優先される事項は人命であり、解決手法としても、国内の法律を遵守することが義務付けられています。

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特殊部隊とは③部隊によって犠牲への考え方が異なる?

軍隊系の特殊部隊と警察系の特殊部隊では、優先する目的だけではなく、犠牲に対する考え方も異なります。
軍隊系の特殊部隊では失敗が許されないため、仮に味方の隊員が死に直面するような状況に陥っても、作戦が優先されます。敵に対しても情けをかける余地はなく、味方の損害を最小限に減らすためなら殲滅するでしょう。つまり、軍隊系の特殊部隊は味方や救出すべき人質でも、ある程度の犠牲はやむを得ないと考えられているわけです。

一方、警察系の特殊部隊では、敵味方どちらに対しても、死に対して厳しい目が向けられています。敵を必ず生きて捕らえるよう命令されているわけではありませんが、敵が銃を向けてくる、あるいは警告に従わないなど、原則として 正当防衛が成立する状況下でしか射殺は許されません。また作戦終了後には、どのような方法で任務が行われたのか、解決に至るまでの過程の検証も行われます。
つまり、警察系の特殊部隊では銃を持った犯人でも射殺すれば正当性が厳しく問われ、より少ない犠牲で任務を遂行することが求められているのです。

 犠牲に対する考え方は、所属組織だけではなく、所属している国家によっても異なっています。ロシアの内務省に所属する特殊部隊は警察系特殊部隊になりますが、ダーティーな手法をとることもあります。逆に日本の自衛隊に所属する特殊部隊のように軍隊系の特殊部隊であっても、任務を遂行する手段に正当性を求める部隊も存在します。

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本書で紹介している明日使える知識

  • 特殊部隊とはどういったものか?
  • 特殊部隊には「軍隊系」と「警察系」がある?
  • 特殊部隊は装備も特殊?
  • CQB(近接戦闘)とはどのようなものか?
  • 特殊部隊は雑草でも食べる?
  • etc... 
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ライターからひとこと

特殊部隊と一口に言っても、所属している国家や組織によって、任務の内容や任務解決のための手段は異なってきます。これまで予想もしなかったような難しい任務が特殊部隊に下されることもあるでしょう。そのような時のために、特殊部隊では今日も訓練が行われています。 本書では、特殊部隊の存在意義から数々の任務、装備や戦闘技術、そして特殊部隊の生存技術まで、さまざまな視点から特殊部隊を紹介しています。おそらく日常生活ではなかなか目にする機会のない特殊部隊の仕事ぶりを学んでみてはいかがでしょうか。