「ホメオパシー」という言葉を聞いたことはありますか? 200年ほど前にドイツ人医師が創始した代替医療のことで、科学的根拠はありませんが、神秘的・魔術的な力を持つといわれています。今回は不思議なホメオパシーの世界をご紹介しましょう。
目次
そもそもホメオパシーって何のこと?
ホメオパシーとはどのようなものなのでしょう?
*「ホメオパシー」とは?*
・18世紀末頃、ドイツ人医師ハーネマンが創始した代替医療、ヒーリング。
・目的は病因に対して強い身体を作り上げること。
・近代医学ではなかなか治りにくい慢性病に効果を発揮するとされる。
・ただし科学的な根拠はない。
ホメオパシーは代替医療(通常医療以外の療法)で、科学的な根拠は認められていませんが、神秘的で魔術的な力を持つとされています。
ホメオパシーのホメオ=「似たもの」、パシー=「療法」という意味で、日本語では「同種療法」「類似療法」などと訳されます。
ホメオパシーでは、健康な人に投与すると病気の時のような症状を引き起こす薬を水などで薄め、実際にその症状を起こす病気の患者に少しずつ投与するという治療法を行います。
これは18世紀末にドイツ人医師ハーネマンが創始した方法ですが、「似たものが似たものを癒す」というホメオパシーの考え方そのものはとても古くから存在していました。たとえばギリシア神話にはこんな話が残されています。
ヘラクレスの息子テレポスは、英雄アキレウスの槍を受け、身体に傷を負ってしまいます。その傷がなかなか治らず苦しんでいると、「傷を負わせた者だけがその傷を癒す」という神託が下りました。
そこでテレポスはギリシアにいるアキレウスのもとを訪ね、彼の槍についていたサビを傷に塗りつけます。すると傷は無事に癒されたということです。
ホメオパシーの目的は病気の症状を改善することだけでなく、病因に対して強い身体を作り上げることで、近代医学ではなかなか治りにくい慢性病、特にその罹患初期に効くとされています。そのため、ホメオパシーの治療を受けた患者は、同じ病因に出会ったとしても病気になりにくいといわれています。ただし科学的な根拠はありませんので注意が必要です。
ホメオパシーの考え方①類似物の法則
ホメオパシーでは具体的にどんな治療を行うのでしょう? 一般的な医療と何か違いはあるのでしょうか?
*ホメオパシーのふたつの基本法則*
「類似物の法則」:健康な人に投与するとある病気と類似の症状を起こす薬が、その病気の治療薬になる。
「超微量の法則」:最適な薬を見つけたら、その最少有効量を用いる。薬は水やエチルアルコールで希釈し投与する(出来上がった薬を「レメディー」と呼ぶ)。
ホメオパシーには、「類似物の法則」と「超微量の法則」というふたつの基本法則があります。
ハーネマンはある時、イギリス人医師ウィリアム・カレンの著作『医薬品について』に書かれていた「マラリアの特効薬であるキナ皮には、胃の活動を強化する働きもある」という内容を読み、実際に自分でキナ皮を服用してみることにします。
すると手足の指先が冷たくなり、心臓の鼓動が速く激しくなり、喉が渇くなどのマラリアに似た症状が現れたのです。
この経験がもとになり生まれたのが、「健康な人に投与するとある病気と類似の症状を起こす薬が、その病気の治療薬になる」という「類似物の法則」です。
またハーネマンは、病気によって引き起こされる全ての症状は、バクテリアやウイルス、気候の変化、環境汚染、精神的な混乱といった様々な病因に対抗するために身体が起こした防衛反応だと考えました。つまり、健康を取り戻すためには防衛反応(=症状)を抑えるのではなく、むしろ強化しなければなりません。
そこでホメオパシーでは、医師は時間をかけて患者の問診を行い、注意深く観察して患者の症状を見極めます。問診では身体の症状だけでなく、患者が置かれている心理的、社会的な状況についても細かく問われます。たとえば次のような内容です。
・1日のうちいつ頃になるとどんな症状が現れるのか?
・普段どんな生活を送っているのか?
こうして得られた情報と、薬物が引き起こす症状についての専門知識を基に、ホメオパシーの医師は患者の防衛反応(=症状)を引き起こし強化するために最適なただひとつの薬を見つけ、投与します。
その投与の仕方にも大きな特徴がありますので、次項でご紹介しましょう。
ホメオパシーの考え方②超微量の法則
ホメオパシーには、「患者に最適な薬を見つけたらその最少有効量だけを用いる」という法則があります。これを「超微量の法則」といいます。
患者に投与される薬は「レメディー」と呼ばれますが、これは薬を水や酒精(エチルアルコール)で薄めて最少有効量にし、砂糖粒に染み込ませたものです。
原料となる薬は鉱物、動物、植物などで、約2,000~3,000種類あるとされますが、よく用いられるのは40種ほどです。
この薬を10倍または100倍に希釈し、瓶の中でよく振って混ぜ合わせるという作業を繰り返します。最終的に、患者に投与されるレメディーは最初の1,000倍、時には10の400乗倍にまで薄められています。
薬の原料をこんなに薄めても、効果はあるのでしょうか?
一般に物質を希釈した場合、10の24乗倍以上に希釈すると、出来上がった液体の中にはもとの物質の分子は1分子も含まれない状態になるという法則があります。つまり、水で10の24乗倍以上に希釈されたレメディーはただの水だということになります。
しかしホメオパシーでは、薄めれば薄めるほどレメディーの効果は高まり、人間の精神面にも効果が現れると考えられています。ハーネマンによると、薬の内に秘められた霊力が希釈され混ぜ合わされることで強まるため、元の物質が含まれていなくてもよいというのです。
ホメオパシーは医師の経験を重視した治療医学のため、自然科学的な裏付けがなくても構わないというわけです。魔術的で神秘的な治療方法だといわれるのはこのためです。
誕生から200年以上経った今でも、欧米諸国にはホメオパシーを利用する人が多くいます。ドイツにはホメオパシーのレメディーを扱う薬局があるほどです。
神秘的なホメオパシーの世界。あなたは信じますか?
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