どうしても叶えたい願いが、あなたにはあるだろうか? たとえ困難な願いでも、悪魔に頼めば実現できるかもしれない。しかし相手は悪魔。生半可な知識で召喚したら、魂を取られてしまうのがオチだ。
そこでこの記事では、『図解 悪魔学』(草野巧 著)を参考に、3回に分けて悪魔に関する知識を紹介する。正しい知識を身につけて、悪魔の使役を目指そう!
目次
悪魔はどんな姿? 典型的な外見に秘められた傾向とは
悪魔の姿というと、どんなものを思い浮かべるだろうか? ねじれた角を生やし、蝙蝠の翼と尖った尻尾を持つイメージが一般的かもしれない。
実は悪魔はどんな姿になることもできる。しかし、彼らが好む外見には傾向があるのだ。
悪魔は動物の姿をとることがある。ライオン、熊、豹、牡牛、蛇、サソリ、狼などの姿で出現することが多いようだ。また、黒い人間の姿をしていることもあった。エジプトの神々のように、人間の身体にトキ、ワニ、犬など動物の頭を持つこともある。
ただし悪魔は、完全に人間の姿を真似ることはできない。真似しきれなかった部分には、なんともう一つ顔がついているのだ。そのため、尻や膝にもう一つの顔を持つ悪魔が存在するのである。
9世紀ごろになって悪魔が絵に描かれるようになると、毛むくじゃらで、山羊の角、蹄または鉤爪、尖った耳、尻尾のある姿がよく現れるようになる。
これらの特徴の多くはギリシア神話のパン神に由来している。パン神は森の神で、混沌とした生命力を象徴する。こうした性質が、キリスト教の秩序と敵対する悪魔の姿としてふさわしいと考えられたようだ。
悪魔が蝙蝠の翼を持つようになったのは14世紀ごろで、それまでは天使の翼が描かれていた。悪魔は神に逆らった堕天使が起源だから、その名残かもしれない。
また悪魔の持っている武器は最初は三叉の鉾だったが、後に引っ掛け棒を持つようになる。これは地獄で罪人を引っ掛けるためのものだという。
典型的な悪魔のイメージにも、理由があるということだ。
左側を好み聖水を嫌う? 悪魔の好みを知り優位に立つ
頼みを聞いてもらおうとするなら、相手の好みを知るのが手っ取り早い。悪魔が何より好むのは悪徳と罪人だが、他にも好きなものがある。
悪魔は方角なら北、左右でいうと左側を好む。北は闇と寒さの地で、中世ヨーロッパ人にとっては地獄のある方角だった。またヨーロッパでは教会の祭壇は聖地エルサレムのある東へ向かって祈るように建てられることが多かったので、西の入り口から入ると左側が北になる。そのため、悪魔は教会の壁の外の北側をうろついているという。
悪魔は時間帯でいえば真夜中、真昼、夕暮れを好む。また荒野や、異教の神々・妖精の好む場所も好きだ。つまり異教の神殿、樹木、森林、山、泉、井戸、川、洞穴、古い廃墟などである。
悪魔は城壁、城塞など巨大な建物を作るのも好きで、巨石建造物は悪魔の手によるものと考えられていた。とくに橋を好み、「最初に渡る生き物の魂を譲り受ける」という条件で、よく人間のために橋を作った。そのためヨーロッパ各地に「悪魔の橋」「悪魔の堤防」が存在する。
一方で悪魔が嫌うものもある。主の祈り、ロザリオの祈り、聖書の言葉、十字架、聖水、イエスの名、聖油、教会の鐘などの聖なるものが代表的だ。
また、悪魔と関連があるものが悪魔除けに効果的と考える風習があったため、火、鉄、青銅、塩、玉ねぎ、にんにく、豚などで悪魔を追い払えるとされた。悪魔に向かって「しーっ」と言うのも効果があったという。
なんと2兆匹以上もいる!? 悪魔の数を数えてみた
キャラクターを挟んで、天使と悪魔が対立する意見を戦わせる……アニメや漫画で、このような場面に出会ったことはないだろうか?
2世紀ごろにはすでに、すべての人間の精神の中に天使と悪魔が一人ずつ住んでいるという説があった。つまり、悪魔は少なく見積もっても地球上の人間の数だけ存在しなければならない。
悪魔の具体的な総数を求めた人は古くから多い。16世紀の医師ヨーハン・ヴァイヤーは、ルシファーは6,666の悪魔からなる1,111の軍団を率いていると考えていた。つまり6,666×1,111=7,405,926の悪魔がいるということである。しかしルター派の人々は悪魔の数はそんなものではないと考え、2兆6658億6674万6664だと主張した。
別の説では、悪魔の数字666を基本とし、それぞれ6,666の悪魔からなる部隊が666集まって中隊となり、それが66集まって師団となる。さらにその師団が6集まって、悪魔の全軍団を形成しているという。こちらの計算結果は、6,666×666×66×6=1,758,064,176となる。
13世紀のある司祭は、悪魔はどこにでもいる、濃密な大気のように人間を取り囲んでおり少しも隙間がないとまで言っている。これだけいれば、あなたの願いを叶えてくれる悪魔も見つかりそうだ。
実は暇じゃない! ワーカホリックな悪魔たちの仕事
悪魔には本来の重要な仕事がある。神の王国が実現するのを妨げることだ。
そのため、悪魔たちは誘惑と憑依を武器とする。悪魔は人々を出世、富、性欲、博打、飲食、娯楽などの世俗的な喜びに誘い、信仰を邪魔するのだ。また悪魔は憑依することで人間を苦しめ、信仰心を曇らせる。これが悪魔の主要な役目である。
しかし時代が下るにつれて、悪魔の仕事はどんどん増えた。
3世紀ごろから、人間の死後の世界にも天国と地獄があると考えられるようになった。そのため悪魔たちは自分自身が地獄で苦しめられながら、同時に地獄の支配者として亡者たちを苦しめる仕事もすることになったのだ。
13世紀にシトー会修道院の院長だったリカルモスという人物は、自分に降り掛かった不都合を著書の中でみな悪魔のせいにしている。塀を作るために石を集めているとき、すぐそばで悪魔が「なんて退屈な仕事なんだ!」と叫んだので、根気が続かなくなってしまったという。
他にも人を病気にしたり、ふいに大爆笑させたり、聖歌隊席にいるときにいびきをかかせたり、咳やくしゃみをさせたり、ごくりと唾を飲み込ませるのも、腹にガスをためさせるのも悪魔の仕業だそうだ。
中世になると悪魔たちは、そんな些細な仕事にも精を出すようになっていたのだ。現代人もびっくりのワーカホリックぶりといえるだろう。
◎関連記事
あなたの不幸は悪魔のせいかも? 悪魔の仕事とは
五月病は悪魔の仕業かも?! 五月病と悪魔の意外な関係性