終末の日が来る前に知りたい イスラム教の天国や地獄

イスラム教_天国_地獄

天国地獄と聞いて、皆さんはどんなイメージを思い浮かべますか?
『天国と地獄』(草野巧 著)では、古代オリエントや北欧神話、日本神話など、古今東西の様々な天国と地獄を解説しています。今回はその中から、イスラム教天国地獄についてお話します。

目次

天国や地獄に行く前に、バルザフで最後の審判を待つ

キリスト教やユダヤ教では、人は死ぬと生前の行いによってすぐに審判を受け、天国や地獄に送られるとされていますが、イスラム教では少し異なります。亡くなった人の魂はいったんバルザフと呼ばれる中間的冥界に留まり、そこで最後の審判を待つというのです。 バルザフとは「地中界」または「墓」のことで、亡くなった人がバルザフに入ると、ムンカルとナキルという2人の天使が現れ、その人の信仰を確かめます。この天使の働きによって、死者は自分がやがて赴く場所が天国なのか地獄なのかという予兆を感じるともいわれています。

バルザフにいる間、人は現世に生きていた頃よりもずっと目覚めた状態にあるとされています。バルザフでの出来事はすべて非現実的なことですが、生前よりもよりリアルで直接的なものに感じられるのだそうです。

やがて終末の日が来ると、死者たちは生きていた時と同じ姿で復活し、最後の審判を受けます。最後の審判は1度きりですから、人によってはバルザフにいた期間がわずか数日という者もいれば、1000年以上も待っていた者もいることになります。
この復活と最後の審判という思想などから、イスラム教では基本的に火葬は行われません。

さて、魂の記録係と追い立て役という2人の天使に付き添われ、アッラーの前にやって来た人間は、公正な裁判によって天国または地獄へと送られます。
この裁判では、帳簿に記された生前の行動だけでなく、手や足、目といった当人の身体の一部までもが重要な証人となることが特徴です。そのため嘘をついてもばれてしまい、公正な裁判ができるというわけです。
ですがアッラーは慈悲深い神なので、人間が生前に取った行動のうち、最高に良い行いをした時のことをとても高く評価する一方、悪行については単にその合計を計算し、判断を下します。なるべく地獄に落とす人間を減らそうということなのかもしれません。

こうして裁かれた人間が赴く天国地獄とはどんな場所なのでしょうか?
次項からはその様子をご案内しましょう。

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飲み物まで熱い 燃え盛る業火の地獄ジャハンナム

イスラム教では、地獄はジャハンナムと呼ばれています。ジャハンナムは業火が燃え盛る奈落のように深い穴で、コーランには詳しい構造は書かれていませんが、後の時代になって7つの階層があると考えられるようになりました。

各階層について、上層から順にご紹介しましょう。

・ジャハンナム(火地獄)……最も高い層にあり、イスラム教徒の罪人が落ちる地獄
・ラザー(燃える火)……キリスト教徒が落ちる地獄
・フタマ(砕く火)……ユダヤ教徒が落ちる地獄
・サイール(燃え上がる炎)……サービア教徒(古代に存在したローカルな宗教の信者)が落ちる地獄
・サカル(業火)……ゾロアスター教徒が落ちる地獄
・ジャヒーム(かまど)……多信教徒が落ちる地獄
・ハーウィア(奈落)……偽信者が落ちる地獄 

ほとんどの階層に火や炎に関する名前がついていることからもわかるように、地獄は炎に包まれた場所だと考えられています。地獄の番人を務める19人の天使たちによって、罪人たちは顔を炙られたり、身体を焼かれたり、熱く煮えたぎった湯を浴びせられたりするのです。仏教の地獄は血の池や針の山など、生前に犯した罪に応じたバラエティに富んだものであるのに対し、イスラム教地獄は基本的に炎に関するものだけだという点が特徴です。

ジャハンナムでは、食べ物や飲み物も罪人たちに苦痛を与えるものでした。
ジャハンナムの底にはザックームの木が生えており、罪人たちはその木の実を腹が破れるほどたくさん食べさせられます。ザックームの木の実は苦く、胃の中で溶けた銅や鉛のように沸騰して罪人たちに苦痛をもたらすといいます。さらに彼らは熱湯を飲まされ、内臓を引き裂かれてしまうのです。
熱湯の他、地獄の住人の身体から流れる膿もまた罪人たちの飲み物になります。この膿は恐ろしい悪臭を放っているともいわれています。

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男性向けの楽園?! 天界の果てにある天国ジャンナ

では、イスラム教天国はどのような場所なのでしょうか。

イスラム教天国はジャンナ(楽園)と呼ばれます。そこには絶対に腐ることのない水や味の変わらない乳、美酒、蜜などが流れる川、あらゆる種類の果実などがあり、食べ物に困ることはありません。天国に迎えられた者たちは金糸で飾られた臥台(ねだい)に横たわって酒を飲んだり、いくらでも好きなだけ鳥肉を食べたりすることもできます。さらに処女の妻が与えられる上、週に1度、神を直接見ることもできるといわれています。

“ミーラージュ(昇天)”と呼ばれるイスラムの伝説では、預言者ムハンマドは大天使ジブリエール(ガブリエル)の導きによって天国地獄を見物したとされています。ムハンマドは天国で、シドラの木(生命の木)や天使の集まる神殿などを見ました。

コーランによると、終末の日を迎えるまで、天界は7つの層に分かれています。”ミーラージュ”の中でムハンマドが天国を見たというのはこのうちの第7天の果てでのことでした。世界が終末を迎える時、この7つの天界はガラガラと崩れてしまい、天国が出現するといわれています。

イスラム教天国地獄のお話は今まで聞いたことがなかったという方も多いのではないでしょうか。仏教やキリスト教の天国地獄とは大きく異なる部分もありますが、悪いことをすれば地獄に落ち、良いことをすれば天国に迎えられるという思想は変わらないといえそうです。

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ライターからひとこと

いつか自分が死んで地獄に行くことになったとしても、イスラム教地獄には絶対に行きたくないものです。仏教の血の池や針の山も恐ろしいですが、ひたすら火攻めにされる地獄とは、想像するだけで苦しくなりそうです。本書ではこうした地獄や天国の様子がわかりやすく図解にまとめられていますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。