【インタビュー】中世のクリスマス料理を探る! ~コストマリー事務局~


近年大注目の歴史料理……
歴史的資料をもとに過去のレシピを再現して味わうイベントをはじめ、歴史料理の勉強会など各地でさまざまなイベントが催されています。

このシーズン気になるのが、中世時代のクリスマスにはどんな料理を食べていたのか

そこで今回は、中世料理再現会やファンタジーアイテムの即売会などを主催しているコストマリー事務局繻 鳳花さんに、中世のクリスマス料理についてお話をうかがいました!


パンタポルタ×コストマリー事務局


――――本日はどうぞよろしくお願いいたします! まずは、コストマリー事務局の活動について簡単にお話しいただけますでしょうか。

よろしくお願いします。
活動は中世ヨーロッパ時代に関連するイベントを行う「ヒストリカル部門」と西洋ファンタジー世界に関するイベントを行う「ファンタジー部門」、2つの部門に分かれています。

「ヒストリカル部門」では、専門としている中世ヨーロッパ時代の食事や料理に関するご紹介をしたり、国内で活動されている団体や個人の方をお呼びして、中世ヨーロッパ時代に纏わる各種体験講座や音楽ライブなどを執り行っています。

「ファンタジー部門」では、主に“ファンタジー世界の中で五感を感じ取ることができる体験型イベント”の企画運営をしています。最近は、大自然の中で実際に食事やモノを作りながら過ごす空間をご用意することが多いですね。中世ヨーロッパ時代に通じるコンテンツもあるので、個人的にはとても楽しいです。


――――ありがとうございます。もうすぐクリスマスということで、中世のクリスマス料理についておうかがいしたいと思います。
そもそも、豪勢な食事でクリスマスを祝うという習慣は、中世頃のヨーロッパではすでに一般的なことだったのでしょうか。

中世のクリスマスは11月から翌年1月まで、長い期間いろいろなお祝いをしていました。現代は12/24・25に集約されていますが、昔はもっとたくさんの祝祭があったんです。
身分にもよりけりですが、当時もいつもより少し豪華な食事を出していた記録があります。


――――それは今と変わらないんですね。王侯貴族、修道院、一般の庶民とではメニューにどのような違いがあったのでしょう?

これも身分によって差はありますね。例えば、王様クラスになると鹿、白鳥、ガチョウやハト、クジャクなど、狩猟でとれるものを大量に用意して客人に振る舞います。ただ単に焼くだけではなく、あたかも生きているかのような装飾を施すこともあります。

庶民クラスにおいては、鶏肉やチーズ、ワイン、クリスマスの時期にだけ用意する料理などをかなりの時間をかけて準備をしていたそうです。小さな村では、一か所の家にみんなで集まり、朝から盛大に祝っていたこともあります。

神に仕える修道院の人たちは、キリスト教の教えに基づき、クリスマスの前に訪れるアドベント(待降節)の時期から一時的な断食をしていたということだったので、乳製品禁止など、ある程度までの食事制限がかかっていたと思います。ただ宗派によって異なるので、全部ではないのかもしれません。


――――クリスマスといえば、キリスト教のお祭りというイメージですが、キリスト教化される以前以後でヨーロッパの食事にどのような変化が起きたのでしょうか。

個人的な意見になってしまいますが、キリスト教の厳格な「教え」と時代ごとの「領地支配」が根底にあったと思われます。領地支配に関しては、年単位で併合・支配の繰り返しという激動の時代でもありましたから、食生活にもかなり影響があったと思いますね。

また、キリスト教における1年の祝祭にも左右されたので、ある時期は食事制限(あるいは断食)をし、ある時期は指定された料理や食材で過ごしていたこともあったかと。特に復活祭(イースター)前の「四旬節(レント)」では、修道院と同じく乳製品や動物性たんぱく質の肉を禁じていた時があったので、さぞかし大変だったかと思います。



――――現代日本ではクリスマスにシャンパンで乾杯するのが人気ですが、中世ヨーロッパでも、クリスマスには飲酒をしていたのでしょうか。

もちろん飲酒はしていました。もし彼等からお酒を取り上げると大変なことになったのかな? と(笑)。地域によって違いますが、ワイン・エール・ビール・ミード(蜂蜜酒)など、いろいろなお酒がありました。


――――欧米のクリスマス料理といえば七面鳥のイメージがありますが、七面鳥は中世の頃から食べられていたのですか?

七面鳥は意外と歴史が浅く、取り入れられたのは17世紀以降だと思います。中世の時代は現地で獲れた肉が主流でしたね。


――――なるほど。それでは逆に、「中世ヨーロッパのクリスマス料理といえばこれ!」という代表的な料理があれば教えてください。

今でも残っているものといえば、形や材料は多少異なりますが「クリスマス・プディング」や「ミンス・パイ」、あと「ローストビーフ」がパッと挙げられます。ローストビーフには「ジャケット・ビーフ(衣服をつけた牛肉)」という名称があり、形も今とあまり変わっていません。

ドイツではお馴染みの「シュトレン(シュトーレン)」も中世ヨーロッパ時代からありましたが、最初の頃は乳製品の使用が禁止されていたので、だいぶ味気なかったのかな? と思います。


――――クリスマスといえば「ブッシュ・ド・ノエル」などのクリスマスケーキも楽しみのひとつですが、中世の頃のヨーロッパでもクリスマスケーキを食べることはあったのでしょうか。

現代のようなフワフワのケーキは当時ないので、ドライフルーツを加えた固めのクッキーやずっしりとしたケーキが出されていたと思います。ベーキングパウダーの偉大さはすごいですね(笑)。


――――中世料理を再現するうえで、現代の日本では手に入りづらい食材や再現が難しいレシピはありますか? もしあれば、代用食材などはどのように工夫されているのでしょう。

少なからずあります。例えば「骨髄を使ったパイ」などがレシピに残っていたりしますが、食材的に日本ではちょっと難しいですね……。また、野菜や果物に関しては、現代ではかなり品種改良が進められているので、味も少し異なっているのかな? と思います。100%完全再現ができないのもそこに理由があります。

どうしても手に入らない食材については、似たようなものを探します。例えば「豆のスープ」のレシピには「豆」としか書いていないこともあるので、その料理集が出された地域・時代・当時流通していた食材を調べた上で近いものを探し当てます。それがけっこうおもしろかったりするのですが。


――――野外で直火を利用した料理イベントも開催されていますが、火の扱いや鍋など料理道具も現代とは違うと思います。難しく感じる面はありますか?

やはり、外の環境と温度ですね。お肉の丸焼きをするといっても、夏と冬では外気温が違うので焼きあがる時間も異なりますし、ずっと火の番をしていないとある時突然肉の脂がしたたって大炎上! ということもあります。そう考えると、一定の温度を保ち、時間も管理してくれるオーブンは偉大です(笑)。


――――イベントで特に美味しいと評判のメニュー、食材はなんですか? 反対に評判の芳しくないメニューはなんでしょう?

ロースト系のお肉はよく好意的なご意見を頂きますね。基本は塩とスパイスを混ぜ合わせますが、そこに野菜や果物ベースのソースを添えることが多いです。
芳しくないものは……強いてあげるなら「レバーペースト」でしょうか。イベントでお出したことはないのですが、自分で試作も兼ねて一口試してみたところ、かなり口には合わなかったです。レバーは好きな方だったのでなおさらでした(苦笑)。


――――それはぜひ味わってみたいです(笑)再現料理を作り味わう中で、書物からは得られない驚きや体験はありましたか?

当時の料理書は材料しか書かれていないことが多かったので、分量や味については調理人の腕にかかっているんだな、と感じました。それに、地域によって使う材料や調味料がまったく異なるのも新鮮な知識になります。
「ここにはこれが書いてあるけど、実際はあったのかどうか?」と調べていくと、意外な事実も分かってきます。

500年以上も前の記録から先人の生活を紐解いていくと、毎回驚きの発見がありますし、なによりも実際につくると美味しいという事実にもたどりつけます。
これからも、地道ではありますが、先人が培ってきた食の歴史を多くの方にご紹介できればいいかなと思います。


――――コストマリー事務局さまの今後の活躍を楽しみにしております! 本日はお忙しいところありがとうございました。


コストマリー事務局
http://woodruff.press.ne.jp/

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