『旧約聖書』に登場する海の支配者、レヴィアタン

レヴィアタン

ファンタジー世界の中で最も有名な生物はドラゴンではないでしょうか。そんなドラゴンの中にも、種類があり、中には支配者と呼ばれているものもいます。
『ドラゴン』(久保田悠羅 著)には様々なドラゴンが紹介されています。今回はそんな中でも、大海竜、リヴァイアサンとも言われる海の支配者レヴィアタンについてお話します。

目次

詳しい形状は不明! レヴィアタンの姿

レヴィアタンは『旧約聖書』に登場しており、「曲がりくねる蛇」「海にいる竜」と称されています。しかしその姿は『旧約聖書』の中でも、頭がひとつと描いているところもあれば、多くの頭を持つ蛇と表現しているところもあります。

『旧約聖書』の「ヨブ記」には、レヴィアタンの鱗や内臓、容姿や周囲への影響などについて詳しく書かれています。
まず鱗ですが、背中側には風の吹き込む隙間もない程に盾のような鱗が連なっています。一方、腹側は鋭い陶器の破片を並べたようになっています。レヴィアタンが進むだけで地面を砕き散らすほどです。
次にレヴィアタンの内臓ですが、心臓は石のように堅く、筋肉は幾重にも重なっています。
この筋肉のために、剣でも槍でも矢でも投げ槍でもレヴィアタンを突き刺す事が出来ません。棍棒で殴られても藁で触れられたくらいにしか感じないのです。
他にも両眼は光を放ち、口からは炎を、鼻からは煙が噴き出し、レヴィアタンが身動ぎするだけで海は沸き立つかのように荒れ狂い、レヴィアタンが通った跡には光の道が出来るといわれています。

最後に、レヴィアタンは恐怖を感じることがありません。そのため誰もレヴィアタンを支配することができず、『旧約聖書』にも「奢り高ぶるもの全てを見下し、誇り高い獣すべての上に君臨している」と書かれています。
「ヨブ記」の他には、「創世記」にレヴィアタンと思われる部分があります。神が5日目に造った「おおきな怪物(獣)」がレヴィアタンと考えられているのです。
『旧約聖書』には「詩編」「ヨブ記」など数多くの場所に、神がレヴィアタンを造ったという記述があります。そしてレヴィアタンを葬ったのも神自身です。神がレヴィアタンの頭を打ち砕いて、砂漠の民の食糧にしたのです。

レヴィアタン2

ウガリット神話に出てくるレヴィアタン

ウガリットとは、北シリア地方ラス・シャムラで発掘された遺跡により発見された都市国家です。この遺跡では、多くの神話を描いた粘土板が出土しました。この神話がウガリット神話になります。
ウガリット神話の中にも、レヴィアタンと思われる記述があります。『バアルとアナト』というバアル神とモート神の戦いを描いている部分に、シャリートあるいはリタン(ロタン)という怪物がでてきます。この怪物がレヴィアタンです。

『旧約聖書』に出てくるレヴィアタンも、シャリートがオリジナルと考えられています。 シャリートは太陽や月を食い荒らして日食や月食を起こす七つの頭を持った多頭竜です。モート神の部下であり、「曲がりくねる蛇」と称されています。バアル神とモート神との戦いの途中で、ウガリット神話の主神であるバアル神によって倒されました。
ウガリット神話はさまざまな研究から、『旧約聖書』だけではなく、ギリシア、エジプト、中東、インドと広範囲の神話にも関係が深いことが判明しました。これらの事から、ウガリットの神話がユダヤ人へと伝わり、シャリートが『旧約聖書』のレヴィアタンになったと推測されています。

レヴィアタン3

レヴィアタンとベヘモットの共通点

『旧約聖書』にはレヴィアタン以外にも、ベヘモットという巨大な怪物が登場します。ベヘモットもレヴィアタン同様に神から造られた獣です。
「ヨブ記」には、筋肉が堅く、骨は青銅の管、骨格は鋼鉄のようであり、牛のように草を食べ、尾は杉の枝のようにたわみ、皮が押し流そうとしても全く動じないと書かれています。
レヴィアタンとベヘモットは、神によって造られた獣以外にも共通点があります。『旧約聖書』の外典や偽典などでは、神による審判の日に共に再び現れ、神の裁きを下す前に、人々を滅ぼすとされています。また、この2体は残された人々の食糧として使われるという部分も共通している部分です。この他にも、ベヘモットが雄、レヴィアタンが雌という記述も残っています。

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悪魔となって登場するレヴィアタン

神に造られた獣であるレヴィアタンとベヘモットですが、時の流れとともに神の支配に反抗し、神への敵対者という位置付けへと変わっていきました。キリストに反抗するアンチキリストであり、悪魔とみなされるようになったわけです。
レヴィアタンの特徴に、固い鱗や心臓を持ち、口からは炎を噴き出すというものがあります。これらは破壊の象徴と見なされ、神がこの怪物を倒す部分だけがクローズアップされます。その他の記述もすべて、悪魔と同一視するように解釈、理解されるようになりました。
この結果、宗教改革の時代になると、レヴィアタンが「悪魔を指す湾曲的な言葉や形姿、あるいは比喩」として用いられるようになります。実際にマルティン・ルターが、ローマ教皇を「レヴィアタン」と名付けました。このようにしてレヴィアタンは、神に反抗する悪魔となったのです。

レヴィアタン4
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本書で紹介している明日使える知識

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ライターからひとこと

悪魔となったレヴィアタンはキリスト教の七つの大罪のひとつ、「嫉妬」をつかさどるとも言われています。これは『旧約聖書』にある「奢り高ぶるもの全てを見下し、誇り高い獣すべての上に君臨している」という記述の解釈から来ているものです。