城を防衛せよ! 城塞都市の設計マニュアル~城門編~

城塞都市_防衛

これまで2回にわたって『図解 城塞都市』(開発社 著)を参考に、城塞都市の効果的な攻め方を考察してきました。今度は反対に、城塞都市を防衛する側の視点に立ち、迫り来る敵兵の侵入を防ぐ方法をみていきましょう。
防衛の要となる城門に着目し、どんな仕掛けや工夫が行われていたのかご紹介します。

目次

城門を防衛するための4つの仕掛け

城壁の中でも最初に建設される城門は、城塞都市を防衛する上で重要な役割を果たしました。もし城門を突破されてしまえば、あっという間に敵兵が城壁内部へとなだれ込んできてしまいます。そこで敵兵の侵入を防ぐために、城門には何段階もの防御のための仕掛けが施されました。

第1の仕掛けは跳ね橋です。
大部分の城は周囲に堀がめぐらされています。さらに周囲に川や海などの水源がある場合、堀に水を注入することでより侵入されにくくすることができました。他にも岬に建てられた城塞では、周囲の岩を削って溝を掘るなど、地形を活用した防衛方法が考案されました。
跳ね橋はこうした堀や溝に備え付けられます。可動式になっており、滑車と錘の力を利用して橋を上昇させ、敵の侵入を防ぐことができました。

第2の仕掛けは殺人孔です。
殺人孔とは石落としのひとつで、城門の通路の丸天井や高所に設けられた開口部です。殺人孔には防衛側の兵が配備され、跳ね橋を越えて侵入しようとする敵兵めがけて、この開口部から飛び道具や石などで攻撃が行われました。また、ここから飛び降りて敵と戦うこともできました。

第3の仕掛けは落とし格子です。
これは入口上部に吊り下げられた垂直の扉を落とすことで、城門が突破されるのを防ごうという仕組みです。この落とし格子が前後に2重に設けられると、敵兵を城門内に閉じ込めてしまうこともできました。さらに閉じ込められた敵には、高所に設けられた殺人孔から飛び道具などで攻撃が仕掛けられます。
こうした落とし格子は城門に溝を彫ってはめ込まれ、巻き上げ機によって操作されました。先端に鉄を被せた木製の格子戸が中心でしたが、中には鉄製のものもありました。

第4の仕掛けは落とし穴です。
落とし穴の中には無数の鋭い鋲が突き立てられています。城門内部へとなだれ込んできた敵兵が床に仕掛けられたトラップドアを開くと、この落とし穴に落ちてしまい、鋲に刺されてしまうというわけです。まるでRPGのダンジョンに出て来るような仕掛けですね。

城門はこのような何重にもわたる仕掛けによって守られていました。さらに門扉は鍵や閂がかけられ、重い丸太で塞がれるなど、容易には突破できない仕組みになっていました。

城塞都市_防衛2
◎関連記事
防衛拠点のつくり方~城塞都市とは? 3つのシンボル~

らせん階段の工夫~防衛に有利な時計回り~

大抵の場合、城門は塔の中に組み込まれているか、左右を塔に挟まれた構造になっています。こうした塔からも城門を襲う敵兵に向けて攻撃が仕掛けられました。
しかしどれだけ守りを固めても、城門を突破され敵兵の侵入を許してしまうことがあります。そのような場合に備えて、城や塔の中にも戦いを少しでも有利に進めるための工夫が随所に施されています。

らせん階段もそんな工夫のひとつです。らせん階段にはさまざまなメリットがありました。軸柱を中心に扇形の石段を積み重ねて造るため、場所をとらないし、経済的でした。 らせん階段は戦いでも効果を発揮します。時計回りになるよう設計することで、攻撃側(登る側)は自身の右側にのびる軸柱が邪魔になり、右手に持つ剣を振るいにくくなります。反対に防御側(降りる側)は武器を持つ右手の方に空間があるため、戦いやすいのです。 この他、らせん階段には踊り場がないため移動速度が速く、かつ一定のペースで駆け下りることができるというメリットもありました。
城門のように特別な仕掛けがあるわけではありませんが、らせん階段のこうした構造設計上の工夫も戦争では大きな力となっていたのです。

らせん階段の構造は、時代や地域により変化がみられます。
11~12世紀のらせん階段は頑丈な基盤の上に建築され、モルタル調合や石材で丸天井が作られていました。しかし12世紀末ごろになると建築は簡素化され、丸天井を作らなくてもよい建築方法が登場します。また14世紀のイングランド北部では、傘型の曲面天井が流行しました。

このように、城や城門には設計当初から使いやすく、防衛しやすくなるよう様々な工夫や仕掛けが施されていました。時代や地域によって差はありますが、設計者たちは緻密な計算のもとに城塞を建築したのです。

城塞都市_防衛3
◎関連記事
城壁を突破せよ! 城塞都市攻略マニュアル~攻城兵器編~
城壁を突破せよ! 城塞都市攻略マニュアル~坑道・火器編~
城を防衛せよ! 城塞都市の設計マニュアル~城壁編~


本書で紹介している明日使える知識

  • 城塞都市はどこに作るべきか?
  • 城塞都市の税金と、難民の受け入れ
  • 領主の暮らしぶり
  • 戦時と非戦時の守備隊
  • 暗殺集団の住むおそろしき城塞
  • etc... 

ライターからひとこと

設計者の立場から城をみてみると、防衛のための工夫が随所に施されていることがよくわかります。本書では城門の仕掛けやらせん階段の構造などもイラスト入りで解説しているので、戦いの様子をイメージしやすくなっています。創作で城塞での戦闘シーンを細かく描きたい時にもきっと役に立つと思います。