城壁を突破せよ! 城塞都市攻略マニュアル~攻城兵器編~

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大砲が普及する前の時代、戦争はどのように行われていたのでしょう? 「あの町を落としてくるように」と国王や主君から命じられたら、どんな戦法を考えますか?
『図解 城塞都市』(開発社 著)は、城塞都市に関心をお持ちの方への入門編として、城塞都市での攻防戦のやり方や、ヨーロッパ各地の城の特徴などを丁寧に解説しています。 今回はその中から、中世の城塞都市攻略の重要なポイントとなる城壁の壊し方・乗り越え方について考察します。

目次

城壁攻略のための攻城兵器①投石機(カタパルト)

城塞都市に攻め込むには、まず都市を囲んでいる城壁を越えて中に入らなくてはなりません。
城壁を弱体化させるため、古代からさまざまな攻城兵器が考案されてきました。

その中のひとつに投石機(カタパルト)があります。ねじり力やてこの原理を利用し、城壁に向けて石などを投げつけるというものです。 投石機の射程距離は、大型のものになると数百メートル程にもなります。攻囲側はこの投石機を使って数十キロもある石を敵に投げつけ、城壁や敵の兵器を破壊した他、火のついた藁や薪を飛ばして城内に火災を起こさせたり、敵の生首を投げ入れて戦意をアピールすることもありました。また、動物の死骸を投げ入れて城内に疫病を蔓延させようとするといった戦法も考案されました。

さて、そんな投石器にはさまざまな種類があります。その中から本書にそって2つご紹介しましょう。
ひとつめは「マンゴノー」です。古代から使われていた投石機で、アームの先端についたカップに石などを乗せ、ねじり力を利用して前方へと飛ばします。架台には車輪がついていて、戦場を自由に移動させることができました。
12世紀にはこのような投石機が何台も用いられ、城壁本体に対して効果的な集中攻撃が行われた。しかし、これらのカタパルトは弾速が遅く、あまりに大きくて重い発射体は射出することができなかったため、結果にはばらつきがあった。最大射程は約500mで、敵弓兵の射程外から射撃することはできた。 『図解 城塞都市』p.122
ふたつめは13世紀に大流行した「トレビュシェ」です。マンゴノーと同様に弾速は遅かったものの、重力を利用した破壊力がありました。
長大な竿の一端に発射体を付ける吊りひもを備え、もう一方の端には錘おもりが付けられていた。大きさにはさまざまあるが、竿の長さと錘の重量によって、40kgから150kgまでの発射体が射出できた。トレビュシェの放つ重量のある発射体は高い弾道を描いて落下し、石造あるいは木造構築物を破壊した。 『図解 城塞都市』p.122
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城壁攻略のための攻城兵器②破城槌

遠距離からの投石機での攻撃と並行して、もっと城壁に近い場所での攻撃も行いましょう。破城槌(はじょうつい)で城壁や城門を打ち破るのです。

破城槌は衝角とも呼ばれる攻城兵器で、車輪つきの架台の上につくられた枠組みから、木の幹や大きな丸太が吊り下げられたかたちをしています。この大きな丸太を数人から数十人がかりで持ち抱え、お寺の鐘をつく時のようにスイングさせ、敵の城壁や城門を何度もついて破壊するという仕組みでした。
破壊の際の衝撃を防いだり攻撃力をアップさせるために、丸太の先端には鉄製の覆いが被せられていました。また、城壁の上から降り注ぐ敵の火矢や石から破城槌を守るため、架台は屋根で覆われることもありました。このような屋根を持つ兵器は「猫」と呼ばれていました。

この「猫」に対し、防御側はどのように対処したのでしょう?
まず、設計段階から城壁を厚くするという方法が挙げられます。たとえば古代ウルの城壁は厚さが25~34mもあったといわれています。

戦時中に行える対応策は大きく分けてふたつありました。ひとつは厚手の織物などを破城槌の動きに合わせて城壁の上から垂らし、衝撃を和らげるというものです。
もうひとつは衝角自体を使えないようにしてしまう方法です。たとえばイスラム教徒から十字軍へと伝わった方法には、城壁の上からフックを垂らして衝角に引っかけ、ひっくり返してしまうというものがありました。

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城塞都市に乗り込むには①エスカラード

城壁の破壊と並行して、城壁を乗り越え内部へと侵入するための作戦も進めましょう。
最も簡単な方法はエスカラード(城壁登攀)です。城壁や城塔に梯子をかけてよじ登るのです。

まずは城壁の周りに築かれた堀を埋めなくてはなりません。先ほどご紹介した「猫」と呼ばれる破城槌の中には、攻撃のための丸太がなく、車輪と屋根だけの動くシェルターのような姿をしたものもありました。工兵たちはこうした「猫」や、大きな盾などで身を守りながら移動し、堀の排水を行ったり、埋め立てたりしました。

このようして城壁にたどり着けるようになったら、いよいよ梯子をかけてエスカラード開始です。梯子をのぼる攻城兵は標的になりやすく弱い存在です。そこで背後から弓兵が援護射撃をかけたり、城壁の上の櫓を先に破壊するなどして、攻城兵のサポートを行いました。

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城塞都市に乗り込むには②ベルフリー(攻城塔)

強固に守られた城壁に対して、エスカラードを仕掛けるのは自殺行為になりかねない。このようなときに解決策となるのがベルフリー(攻城塔)だった。ベルフリーは車輪を備えた木造塔で、アッシリアの資料にも描かれている古代以来の攻城兵器だ。 『図解 城塞都市』p.116
ベルフリーは城壁の高さに合わせてつくられました。戦争前にこの大掛かりな組み立てを行うのは骨の折れる作業でしたが、もっと大変なのは組み上がったベルフリーを動かして堀を越えさせ、城壁に寄せる作業です。戦いのさなか、頭上からは敵の火矢や石などが雨あられと降り注ぐ中で、でこぼこの地面の上を塔が倒れないように慎重に移動させることは至難の業だったといえます。

なんとか城壁にベルフリーを寄せられたら、最上部にある木造の跳ね橋を架け渡し、いよいよ突入です。多層構造のベルフリーは大勢の攻城兵が登れるようになっており、次から次へと胸壁上へ突撃していきました。ベルフリーの中には弓兵を乗せて敵の上方から射撃できるようになっているものもありました。

このように、城塞都市の城壁攻略を目的として、古代からさまざまな攻城兵器が考案されてきました。 しかし15世紀を過ぎると状況は一変します。攻城戦に大砲が使われるようになり、城の設計の仕方が見直されることとなったのです。それまで高くて厚い方がよいとされてきた城壁は、城壁の上部に大砲を乗せるため低くなり、広範囲を攻撃できるよう多角形に再建されたり、第2の城壁を周囲にめぐらせるなどしました。こうして16世紀以降、本格的に火薬の時代が始まります。

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本書で紹介している明日使える知識

  • 攻城戦の兵士の装備
  • 戦時と非戦時の守備隊
  • 城壁上での防衛戦
  • 櫓から岩石や熱湯などで攻撃
  • 射眼・銃眼
  • etc... 

ライターからひとこと

今回ご紹介した攻城兵器のうちのいくつかは、ヨーロッパだけでなくアジアや日本でも似たものが使われていました。洋の東西を問わず、城を攻めるにはさまざまな知恵と工夫が必要だったのですね。