神聖ゆえに悪魔召喚にも使われたパワーストーン「ブラッドストーン」

ブラッドストーン

パワーストーンとして知られるブラッドストーンには、ブラッドという単語が表しているように、血をイメージさせる赤い斑点があります。この斑点のために、ブラッドストーンはイエス・キリストやイシスの血が染み込んだ石と言われ、宝石の価値以上に聖なるものとして 扱われてきました。ではブラッドストーンには、どのような力があると考えられていたのでしょうか。
パワーストーン』(草野巧 著)では、サファイアやターコイズなど様々なパワーストーンを紹介しています。今回はその中でも、血玉髄(けつきょくずい)と呼ばれるパワーストーンブラッドストーン」についてお話します。

目次

ブラッドストーンの赤い斑点は、イエスの血なのか

キリスト教の祖とされるイエスには、様々な伝説があります。
ただの物語として語り継がれているだけではなく、伝説中に出てくる品物も重要な意味合いを持っています。これらのイエスにまつわる遺品のことを、聖遺物といいます。
そのひとつに、「ベロニカのヴェール」があります。イエスは革新的な教えを説いたためユダヤ教徒に訴えられ、エルサレムのローマ総督官邸にて、十字架刑を言い渡されました。そして、総督官邸から処刑場であるゴルゴダの丘まで引かれて行きます。この時、ベロニカという乙女が自らかぶった亜麻布のヴェールで、イエスの額から流れる血と汗を拭ったと言われています。これが「ベロニカのヴェール」です。

ブラッドストーンにも同じような伝説があります。イエスが十字架上で処刑された時に、十字架の下の大地には緑色の碧玉(ジャスパー)の岩がありました。ローマ兵が槍でイエスのわき腹を突き刺すと、そこから溢れ出した大量の血が大地へと流れ落ち、そこにあった碧玉の岩を赤く染めたのです。この時に、緑色のなかに血液が染み込んでいるような赤い斑点を持つブラッドストーンが生まれたといわれています。

似たような伝承は古代エジプトにもあります。古代エジプトにおいて、ブラッドストーンは「イシスの血」と呼ばれ、護符として人気がありました。イシスとは冥界の王であるオシリスの妻です。この伝承がキリスト教の世界に入り込み、ブラッドストーンにイエスの血が染み込んだという伝説に変えられたという説もあるようです。
ブラッドストーン誕生の伝説は、中世期のヨーロッパ中で信じられていましたが、ブラッドストーンそのものはイエスの聖遺物として一般的に認められていません。 それにも関わらず、この伝説がヨーロッパ中に影響力を持ったことを考えると、ブラッドストーンは聖遺物に匹敵する神聖な宝石であることがわかります。

ブラッドストーン2

ブラッドストーンで悪魔を呼び出す

古くから、悪い魔法使いたちは、自分の望みを叶えるために地獄と契約を結んで悪魔の力を借りるといわれていました。地獄と契約する方法のひとつとして、ブラッドストーンを用いた儀式が『聖なる本』という魔法書に記されているとされています。

儀式の2日前に、一度も使った事のないナイフで、野生のハシバミの木から一度も果実のなったことのない一枝を、太陽が地平線から昇る瞬間に切り取ることなど、細かい条件が付けられています。儀式のなかでブラッドストーンは、魔法円を描くために使われます。 この方法を使えば、悪魔は嫌でも現れないわけにはいかなのだと言います。

ブラッドストーン3

16世紀以前のブラッドストーンは太陽の石だった?

16世紀以前の古い時代では、ブラッドストーンはヘリオトロープと呼ばれていました。ヘリオトロープとはギリシア語で「太陽の方向」を意味しています。
このためブラッドストーンには、太陽の向きを変える魔力があるともいわれています。これは「ヘリオトロープ」という同じ名前を冠する植物の伝説と関係があります。
古代ローマ時代に流行した神話で、太陽神ソル、オルカムス王の娘で類い稀なる美人のレウコトエ、太陽神の恋人であり海の妖精であるクリュティエの三角関係を描いたものです。

太陽神は美しいレウコトエを愛していましたが、実はそれ以前から、クリュティエとも深い関係にありました。クリュティエは太陽神の心変わりを知ると、激 しく嫉妬しました。そして恋敵であるレウコトエを陥れようとしたのです。
クリュティエは、ソルとレウコトエの関係を大げさに吹聴しました。さらには、 レウコトエの父であるオルカムス王にも告げ口したのです。
娘の情事を知らされた王は、地面に深い穴を掘り、その穴に娘を埋め、重たい砂の山を被せました。太陽神はまぶしい光で砂の山を打ち破りましたが、そのときにはすでにレウコトエは土に押しつぶされて死んでいました。

これでクリュティエは、太陽神が自分のもとに戻ってきてくれると期待します。しかしクリュティエの期待に反し、彼はもう二度と彼女のところには戻ってこなかったのです。 
クリュティエは半狂乱となり、裸身のまま髪を振り乱して、昼も夜もなにも食べずに野天の大地に座り続けていました。そして、大空を渡っていく太陽神のほうばかりを見続けます。数日が過ぎると、彼女の手足は大地にくっつき、身体は草になり、顔はスミレに似た花になりました。クリュティエは植物のヘリオトロープになったのです。 

太陽の方を向いている植物のヘリオトロープと、太陽の方向を変える魔力をもつ石のヘリオトロープは、どちらも太陽光線と深い関係がありそうですね。他にも、植物と石の両方のヘリオトロープを用いて秘密の呪文を唱えると、透明人間になることができるという言い伝えもあります。

ブラッドストーン4
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ライターからひとこと

ブラッドストーンは、儀式や呪文の道具としても馴染みの深かったパワーストーンなのですね。
かの有名な「聖杯」も聖遺物のひとつです。ゴルゴダの丘でイエスが処刑された際に流した 血を受け止めた杯で、「聖杯伝説」のモチーフとなりました。