
いよいよ「戦闘」です。相手は人々に害を為すモンスターか、悪意をもつ悪者か。引き続き「ファンデルヴァーの失われた鉱山」の冒頭で解説しましょう。 P.6 右段「以下の読み上げ文を読み、遭遇を開始すること:」から、最初の戦闘について書かれています。(*0)
ここにも初心者DM向け手引きが書いてあります。最初の戦闘遭遇を題材に(ネタバレは避けて)、プレイヤー、DMがそれぞれ、どうプレイすればよいかを述べていきます。
「以下の読み上げ文を読み、遭遇を開始すること:」の次の、囲いの中に読み上げ文があります。
皆さんがトライボア街道に入ってからもう半日が過ぎようとしています。
道の曲がり角に来かかったとき、皆さんは50フィート(つまり15m)ほど前方に2頭の死んだ馬が倒れて道を塞いでいることに気づきます。それぞれに黒い矢羽のついた矢が突き立っています。ここでは道のすぐそばまで森が迫り、道の両側は小高い斜面になっており、斜面は密集した“やぶ” におおわれています。
遭遇がどのような状況ではじまるかは重要です(*1)。たとえば日没後だったり、陽の差さない部屋やダンジョンの中で真っ暗だったら、ヒューマン、ハーフリングのPCには明かりが必要になります(*2)。読み上げ文では、PCの視点で見える状況が描写がされます。DMは読み上げ文を読み上げることで、戦場のおおまかな状態も説明できます。
DMが読み上げた状況から、プレイヤーは自分のPCがどう行動するか考えます。前進するか止まるのか。目の前に見えるものに近づくのか、周囲を警戒するか。馬車を運転しているなら馬が逃げないようにするとか、降りて戦闘態勢をとるか。
決めたらDMやほかのプレイヤーにわかるように提案したり、宣言しましょう。それに対し、DMはさらに説明をしたり、ほかのプレイヤーは自分のPCはどうする、というやり取りとなります。まだ戦闘処理ではないので、これらの発言の順番や優先順位はありません。普通に会話をするつもりで、テーブルトークしましょう。
馬の死骸についての詳しい情報は、上の読み上げ文の次にDM向けに書かれています。PCの誰かが死骸に近づいたり、調べるなれば、DMはその詳しい情報を元に判明することをプレイヤーに追加で教えます。そのうえで、さらに次の読み上げ文を読み上げましょう。
鞍袋はひっかき回されたあとです。そして近くには空っぽの革製の地図ケースが落ちています。
読み上げたらDMは、PCたちがそれぞれ、馬の死骸の近くにいるのか、馬車の近くか、あるいは馬車に乗っているのか、各プレイヤーに確認します。死骸を調べに来たPCは、当然死骸の近くにいるとします。(*3)
そのうえでDMは、「ここからは戦闘場面にする」と宣言して、本格時に戦闘に突入します。
上の読み上げ文に続いて、戦闘をどのようにルール処理していくか説明されています。この箇条書きをDMが順番に片づけていけば、この最初の戦闘遭遇を終了までプレイできます(*4)。
DMは書いてある通りにデータ・ブロックを見て、各プレイヤーにPCのキャラクター・シートの「受動【判断力】〈知覚〉値」を教えてもらい、不意打ち(*5)の確認を行いましょう。この際、「"受動"とつくものと、セーヴィング・スローというのは、PCがなにかされた場合に、それに抵抗しようとするルールだよ」と解説しておきましょう(なおDMも、ここではそれ以上に詳しくなくても大丈夫です)。
プレイヤーは、キャラクター・シートの「受動【判断力】〈知覚〉値」を答えます。以後、プレイヤーは戦闘中、キャラクター・シートの中央と右下の特徴を参照します(図1)。
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(図1)クリックで拡大できます |
不意打ちについての確認が終わったら、いよいよ行動順を決めて、戦闘行動をとっていきます。
戦闘では行動する順番である「イニシアチブ」を決め、その順に行為をルールに則って処理していきます。その戦闘におけるイニシアチブの値は、1d20の出目とキャラクター・シートの「イニシアチブ」の数値を計算します。
これは【敏捷力】能力値判定なので(*6)、DMは敵の種類ごとにd20の出目+【敏捷力】修正値を計算します。この遭遇の敵はモンスター1種なので、ひとつだけイニシアチブを決めます。
その値が大きい方から行動していきます。行動順が来て行為を行うことを「ターン」、ターンが一巡するすることを「ラウンド」(*7)と言います。ただし注意がひとつあり、前項で「不意討ち」を受けてしまったPCは、第1ラウンドのターンにはなにもできません。第2ラウンドのターンが回ってきたら、その時には行動できます。
図1では「イニシアチブ」に「-1」とありますから、1d20の出目からマイナス1します。図2はハーフリング/ローグのキャラクター・シートからで、イニシアチブに+3とありますから、d20の出目+3がイニシアチブの値になります。
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(図2)クリックで拡大できます |
DMは、PCやモンスターの名前とイニシアチブの値をひと組にして、高い順に箇条書きで書き留めましょう。一度決まった行動順はその戦闘中は変化しないので、用紙やホワイトボードなどに書いて、みんなで参照できるようにすると良いでしょう。イニシアチブを管理をするグッズなどもあります。
イニシアチブが回ってきた自分のターンに「移動」と「アクション」を行うことで戦闘は進み、終わるまで繰り返されます。「移動」と「アクション」は好きな方から実行できできます。
さらに「ボーナス・アクション」と指定されている行為(ファイターの「底力」、2レベルのローグの「巧妙なアクション」など)があれば、それも実行できます。
「移動」では「移動速度」にあるだけの距離を移動できます。図1のPCは移動速度に30フィートとあり、それだけ移動できます。今、馬車から馬の亡骸まで50フィートですから、亡骸の傍にいるPCたちと、馬車にいるPCたちは、1回の「移動」では到達できない互いに"離れた場所にいる"ことになります。
「移動」は「アクション」をはさんで分割ができます。図1のPCは必要に応じて、まず半分の15フィートだけ「移動」して「アクション」を行い、残り15フィートの「移動」を行うことができます。
また、伏せているクリーチャーは、移動力の半分を消費して立ち上がることができます。hpがゼロになって倒れ、何かしらの回復でhpが1以上になっても、自動的には立ち上がらず、倒れている「伏せ」状態から、立ち上がる必要があるのです。他の理由で「伏せ」になることもあります。立ち上がって、残っている移動速度の分、さらに移動できます。
「アクション」は、移動以外の戦闘中の行為全般が詰まっています。この遭遇では、次の行為のうちひとつを行います(*9)。
攻撃:近接武器、遠隔武器で敵を攻撃します。主な攻撃手段は「攻撃&呪文」にまとめられています(図1)
呪文の発動:1アクションで発動できる呪文を使います(*8)。攻撃、回復等、内容は呪文によります
早足:「移動」とは別に、1アクションとして移動速度以内の移動をします
隠れ身:物陰に身を隠し、攻撃の対象にならないようにしたり、ローグが「急所攻撃」の条件を満たすために行います
待機:1アクションで行う行為を指定し、それを実行する切っ掛けを待ちます。「武器が届くところに敵が来たら攻撃する」「ドアが開いたら呪文を発動する」といったことが待機できます
回避:攻撃を避けることに集中します。「回避」を取っているPCへの攻撃の判定には「不利」がつきます。また「回避」しているPCは【敏捷力】セーヴに「有利」がつきます
物体の操作:戦場にある物体をどうかしたり、アイテムを使ったりします
さらに、使うタイミングが「ボーナス・アクション」である行為もPCのターンのうちに実施できます。
モンスターの場合は、データ・ブロックの「アクション」に主な行為が記載されていますが、PCと同じように上記のうちで可能な行為もDMが任意に行うことができます。モンスターがボーナス・アクションで行う特徴などを持っている場合は、PCと同様に実行することができます。
これらターンを順にこなし、ラウンドを繰り返し、その結果として、PCたちか敵のいずれかが戦闘を続けられなくなったら戦闘が終わります。戦闘が続けられないというのは、hpがゼロになったり、和解したり降伏したり、逃げだしたりした場合です。
次回は戦闘遭遇のプレイの流れに沿って、戦闘遭遇の位置と攻撃方法について紹介します。
図1:「インスピレーション」も明るくしてあるのは、戦闘中のd20を振る時にもインスピレーションが使えるからです。
(*0) 戦闘と、戦闘に準じるPCに成功・失敗の可能性が降りかかる場面とを「遭遇」と呼びます。区別するために「戦闘遭遇」と、話し合いや、技能判定で切り抜けようとする交渉やなにかしらの競争する場面を「遭遇」と言い分けることもあります。
(*1) 戦闘ではなくても、部屋や建物に入った時点や重要なNPCに出会った時など、特別な風景にPCが面と向かったタイミングで読み上げ文が用意されていることが多いです。
(*2) 『スターター・セット』のPCのうち、エルフとドワーフは「暗視」という特徴を持っていて薄暗い中で目が見えます。ヒューマン、ハーフリングは「暗視」がないため、物を見るのに明かりが必要になります。
(*3) DMはできると思えば戦闘をはじめてしまわずに、PCがより詳しく死骸を調べたり、馬車になにかしたり、馬車の馬をなだめるとか、周囲を警戒するとか馬車から降りるとか、といったプレイをしてもらってもかまいません。ただ初めてDMをするというなら、死骸に近づいたPCがいた時点で記述通りに戦闘に移ったほうが良いでしょう。ここでも、用意されていない情報はゲームを進めるのに不要ですので、用意していない事柄についてプレイヤーが質問したら、「その情報は書いてない。次に進むよ」として進めましょう。
(*4)これらは入門編として書かれていて、他のアドベンチャー・シナリオ製品の遭遇にはありません。
(*5)D&D第5版の「不意打ち」は、第1ラウンドでのターンを失う、というものです。
(*6)イニシアチブを決める判定は「能力値判定」です。なので、PCがイニシアチブを決めるときにインスピレーションを持っていたら、それを消費して「有利」でイニシアチブ判定を行うことができます。
(*7)1ラウンドは6秒です。各クリーチャーはほんとうは同時に動いているであろうことをゲームとして順番に処理しているので、個人の1ターンもゲーム中の時間で6秒くらいと考えられます。
(*8)多くの呪文は「発動時間:1アクション」ですが、一部の呪文は「1ボーナス・アクション」「1リアクション」の呪文もあります。
(*9)さらに「援護」「離脱」「捜索」がアクションで行うことができます。これらを使うほど、苦戦したり情報が仕込まれているわけではないので今回は省きます。もちろん、セッション参加者全員で「ルールを全部活用しよう」という場であれば使っていただいてかまいません。
〉D&Dのはじめかた一覧
次回は10月26日(土)に公開予定!
ダンジョンズ&ドラゴンズ 日本公式サイト
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