【夏のホラー企画!ディオダディ荘の怪奇談義】
これはFDorHRさんから寄せられた、友人と鏡にまつわる話です。
※「怖い!」と思ったら、最後にある「怖かった!」ボタンで投票をお願いします!
※投票期間は終了しました。
◆
大学生のころの話です。
大学で知り合って仲良くなった友達がいました。県外出身の彼は大学に通うため近くの安アパートに住んでいたので、課題で遅くなった時や飲み会の後は彼の部屋に泊めてもらうことがよくありました。
そんな彼がおかしくなったのは大学二年の夏でした。
それまでマジメだったのに突然講義を無断欠席するようになり、飲み会にも顔を出さなくなってきたんです。電話やメールをしても返事が無かったので、さすがに心配になって彼の様子を見に行ってみると、彼は部屋の隅で膝を抱えてうずくまっていました。
髪はボサボサで、額やほっぺたには爪で引っ掻いたような赤い線が何本も。目は真っ赤に充血して、青くなった唇でずっと「お前は誰だ、お前は誰だ」って繰り返し呟いていました。
明らかに様子がおかしかったので肩を揺すりながら自分の名前を告げて「何があったの?」と尋ねました。すると、彼は「本当に?」と何度も私の名前を確認したあと、自分の顔を押さえたままゆっくりと話始めました。
「最近暑いから怪談でもしよう、って話になったんだ。俺は怖い話なんて全然知らなかったから、適当にネットで怖い話を探してたら面白い話を見つけたんだ。鏡の前で自分に向かって『お前は誰だ?』って言い続けると狂ってしまう、って話だった。面白半分に試してみたら、その日以来自分の顔も、他人の顔も、てんでバラバラに見えるようになってしまったんだ。鏡の前で瞬きするたび、違う顔のやつが写ってる。そいつが、その顔が、俺と同じように笑うんだ。俺じゃない顔で、俺と同じように」
その後、彼はどこかに病院に入院して、大学もいつの間にか辞めたと風の噂で聞きました。
今でも当時のことを思い出すのですが、一つだけどうしても分からないことがあるんです。
安アパートの彼の部屋には鏡が一つもなかった筈なのに、彼は一体何に向かって「お前は誰だ」と問いかけてしまったんでしょうか?