台所用レンジにオイルランプ ヴィクトリア朝の生活用品

ヴィクトリア朝_生活用品

ヴィクトリア女王が支配していた頃の19世紀イギリスは、人々のライフスタイルに大きな変化のあった時代です。
『図解 メイド』(池上良太 著)では、ヴィクトリア朝の頃のイギリスを中心に、メイドの仕事内容や生活、当時の社会の様子などを幅広く解説しています。今回はその中から、ヴィクトリア朝生活用品について、台所用レンジや照明器具の変遷を中心にご紹介します。

目次

ヴィクトリア朝の生活用品①台所用レンジの変遷

ヴィクトリア朝では様々なタイプの台所用レンジが登場します。
18世紀頃までは、密閉されていない開放型のレンジが主流でした。しかし、開放型レンジは熱効率が悪く、料理を作る際に大量の石炭を使わなければなりません。

そこで、19世紀になると密閉型の料理レンジが登場します。開放型レンジに比べ、密閉型レンジはより効率的に料理ができる上に多機能でした。
この密閉型レンジは、肉を焼くロースター、パンを焼くオーブン、煮炊きをするためのバーナーなど多様な機能を持っており、ヴィクトリア朝の台所に革命をもたらしたといわれている。 『図解 メイド』p.50
しかし、この新しい密閉型レンジにも欠点があります。それは開放型レンジと同じく、石炭を燃料に使っているということです。石炭は点火に時間がかかり、煤煙が出るため掃除が必要で、毎日黒鉛を塗るなどの手入れもしなければなりませんでした。また火加減の調節も難しかったため、料理人や台所女中たちはレンジを使用する際にそれぞれ独自の基準を作っていたといいます。

19世紀後半になると、ガスを使ったレンジが新しく登場します。石炭レンジに比べて火の調節がしやすく、手入れも簡単でしたが、当時の人々はガスの火は身体に悪いと考えていたため、なかなか普及しませんでした。

ヴィクトリア朝の人々の台所には、このようなレンジの他に、ロースター、シチュー用の大きな平鍋、コンロ、大きな棚付きの調理台、食器棚、臼などが設置されています。臼は砂糖の塊を砕いたり、肉を叩いて柔らかくする作業に使われていました。氷を使った冷蔵庫も存在していましたが、当時はまだ氷を入手できる家庭は限られており、一般的ではありませんでした。
鍋やフライパンなどは、銅製で内側に錫のメッキを施したものが好まれました。しかし値段が高く、手入れも難しかったため、一般の家庭では鉄製のものが使われていました。

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ヴィクトリア朝の生活用品②照明器具と暖房器具

ヴィクトリア朝では、レンジなどの台所用品以外に、照明器具も急速な発展を遂げています。

19世紀初頭に主に使われていたのは蝋燭です。獣脂や蜜蝋などでできていて、嫌なにおいや煙、ススが出るものの、安価なことが特徴でした。

やがて時代が下ると、オイルランプが登場します。蝋燭に比べて明るく、煙も少ない反面、当初は非常に高価だったため、富裕層の邸宅などで主に使われ、労働者階級の人々は引き続き安価な蝋燭を使い続けていました。しかし19世紀半ばになるとひろく普及するようになります。
オイルランプは手入れが大変で、こまめに掃除をする必要がありました。当時、オイルランプの手入れを行っていたのは主に従僕などの男性使用人です。さらに、富裕層の大きな屋敷にはランプの清掃を専任で担当する者がいたといいます。

ガス灯が初めて街灯として導入されたのは1807年です。ガスを使ったランプは、それまでの蝋燭やオイルランプに比べて格段に明るく、維持費用もオイルランプより安かったものの、一般に普及するのは1870年代以降と、最初にガス灯が登場してから実に60年以上も後のことでした。その理由として、扱いが難しいこと、ガス特有のにおいがあることや、当時の人々には明るすぎると思われていたことなどが挙げられます。

ヴィクトリア朝ではこのように、照明器具が急速な発展を遂げましたが、一方で暖房器具には大きな変化はみられません。
家庭の暖房には暖炉が使われています。冬を中心に、暖炉は家族が集まりくつろぐ場所となった他、労働者階級の集合住宅や農村などでは、料理をするためにも活用されていました。
使用人のいる家庭では、暖炉の管理をするのは家女中や雑役女中の仕事とされたようだ。朝早く起きて火をおこしたり、石炭を運び込むのはたいへんな重労働だったという。 『図解 メイド』p.48
変化の激しかったヴィクトリア朝のイギリスですが、この暖炉のように変わらず使い続けられたものもあったのです。

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ライターからひとこと

現代ならボタンひとつでお湯が沸くのに、ヴィクトリア朝の頃のイギリスで料理をするために重い石炭を家の中に運ぶことからはじめなくてはならないとは辛すぎます。科学の進歩に感謝するばかりです。