ファンタジーRPG入門①


書き手:上田明(HobbyJAPAN)

ダンジョンズ&ドラゴンズ ロールプレイング・ゲームは剣と魔法の世界における物語のゲームである。

王、貴族、領主といった支配階級でも、町や村で営み、徘徊するモンスターや、圧政や税や戦(いくさ)におびえる民でもなく。武具や拳を駆使し、あるいは魔力に由来する特異な力を頼みに世界を渡る勇の者たち。理知的であったり、猛々しかったり、怪奇的であったりとそれぞれであるが、かれらは「冒険者」と呼ばれ、時に、高名な英雄にも堕ちた悪漢にも、神や悪魔や悪辣なドラゴンに挑み人知れず世界を救う者にすらなりうる。

その物語を観たり読んだりするのではなく、遊ぶ君たち自らがキャラクターをプレイして体験し、物語を切り拓いていくのがテーブルトークRPGの王道「ダンジョンズ&ドラゴンズ」だ。

2014年夏、「ダンジョンズ&ドラゴンズ(以降"D&D")」の 5th Edition にあたる新バージョンの“Dungeons & Dragons Player's Handbook(以降"PHB")”“Dungeons and Dragons: Starter Set”が発売された。この話題は、ゲームのニュースサイトで取り上げられるのにとどまらず、現地アメリカではTVニュースで報道され、大手新聞が取り上げ、幾人もの著名人や芸能人がお祝いの言葉を発した。
 
今回の新バージョンは、過去の各バージョンのユーザーそれぞれから好評を得て人気は沸騰、すみやかに"Origin award 2015"にて、PHBが"Best Role Playing Game"、“Dungeons & Dragons Monster Manual(以降"MM")”が"Best Role Playing Supplement"を受賞。ソード&ソーサリーの「王道」タイトルであることを不動のものとして、現在に至っている。こうして、世界最初のテーブルトークRPG(以降"TRPG")であるD&Dは、元祖にして最新を誇っているのだ。

当然ながら英語以外での展開が望まれ、ドイツ、日本では署名運動まで起きた最新のD&D。ついに2017年、日本語を含む多言語展開が発表された。世界的スタンダード・ファンタジーRPGが、全編にわたり日本語でプレイできる日が間もなくやってくる。

この連載では、この機会にD&Dに興味を持ったという人向けに、「D&Dとはどういう遊びなのか」「D&Dが表現する剣と魔法の世界とは」「新バージョンの特徴」などを数回にわたって日本語版の中から引いて紹介していこう。

そのあとには、D&Dが日本においてどのように広がっていったのか、といった話題をお伝えしていく。

はじめに

ダンジョンズ&ドラゴンズ ロールプレイング・ゲームは剣と魔法の世界における物語のゲームである。そこにはいくぶん、子供のごっこ遊びに似た要素がある。ごっこ遊びと同じように、D&Dもまた、想像の力が原動力だ。嵐吹く夜空のもとにそびえる城を思いえがき、そこに待つ数々の危険に、勇敢な冒険者がどうやって立ち向うかを想像する――そんな遊びである。

(略)

ごっこ遊びと違うところもある。D&Dでは、物語を進める仕掛けとして、冒険者の行動の結果がどうなったかを決定する方法が定まっている。プレイヤーは自分の操る冒険者の攻撃が当ったか外れたか、冒険者が崖を登りきれたか、魔法の電撃を転がって避けることができたか、その他さまざまな危険な行為を首尾よくやってのけることができたかどうかを判定するためにダイスをロールする(=各種のさいころを振る)。物語の中ではどんなことでも起りうる。けれども、ダイスのロールしだいで、ある結果が他の結果よりも高い確率で起きるということは、ある。

(略)

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』において、プレイヤーはそれぞれ1人の冒険者(キャラクターともいう)を作成し、他の友達がプレイする冒険者とチームを組む。この集団、仲間、グループは、力を合せて暗い地下迷宮、廃墟と化した都市、呪われた古城、密林の謎の寺院、不思議な山の奥底の溶岩の煮えたぎる洞窟……を探険する。冒険者たちは謎を解き、他の登場人物と会話し、驚くべき怪物と戦い、想像を絶する魔法のアイテムその他の宝物を見出す。

ただし、1人はダンジョン・マスター(DM)の役をつとめる。DMはこのゲームで皆が物語を生み出すうえでのまとめ役であり、同時にゲームの審判役でもある。DMはキャラクターたちが挑むべきアドベンチャー(冒険)を作成する。キャラクターたちはアドベンチャーの中に待つ危険を乗り越え、どの道を行くべきかを決断する。たとえばDMはレイヴンロフト城の入口のありさまを語り、プレイヤーたちは(自分の操る)冒険者が何をするかを決める。冒険者たちは古びた危なっかしい跳ね橋を渡ってゆくだろうか。ロープで体をつなぎあわせて、万一跳ね橋の床が抜けても落下の危険を最少にしようとするだろうか。それとも魔法の呪文で裂け目を越えてゆくだろうか。

さて、DMはこれを受けて、冒険者たちの行動がいかなる結果に至ったかを裁定し、冒険者たちがどんな目にあうかを語る。DMは、プレイヤーがどんなことをやろうとしても“それをやったらどうなるのか”をその場で考え出して対応することができるので、D&Dはたいそう柔軟性の高いゲームであり、毎回の冒険が思いもよらない、すばらしくわくわくする展開をむかえる。

そしてこのゲームに本当の意味での終りはない。一つの物語が、一つの冒険が終ったならば、次の物語、次の冒険が待っており、ひとつながりの長い物語になってゆく(これをキャンペーンという)。少なからぬD&Dプレイヤーが、何ヶ月も、何年もかけてキャンペーンを遊ぶ。毎週のように友達と顔を合せては、前回の続きの話をまた遊ぶ。キャンペーンが進むにつれて冒険者の力は強まってゆく。怪物を倒すたび、冒険を終えるたび、宝物を見出すたびに、物語は前へ進んでゆくが、それだけではない――そのたびに冒険者もまた、新たな能力を手に入れるのだ。この“力が高まってゆくこと”は、冒険者のレベルという形であらわされる。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』というゲームに勝敗はない。すくなくとも、通常の意味での勝敗はない。DMとプレイヤーは一緒になって、恐るべき脅威に立ち向う勇敢な冒険者たちの物語を作りあげてゆく。時には冒険者が無惨な最期をとげることもある。どうもうなモンスターに八つ裂きにされて。あるいは、ずる賢い悪党の手にかかって。しかしそれで終りではない。生き残った冒険者たちは、死んだ仲間を生き返らせる強力な魔法を求めて旅に出ることもできる。また、死んだ冒険者のプレイヤーが、新たなキャラクターを作成して冒険を続けることもできる。冒険の一行が個々のアドベンチャーの目的を果せないままに終ることはあるだろう。けれどそれでも、誰もが楽しい時間を過ごし、記憶に残る物語を生み出せたなら、彼らはみな勝利したのだ。


「ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック 日本語版」P.5 「はじめに」より。セッションのプレイ会話は省略。


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