メイドの職種②華やかだけど苦労もあった小間使いと客間女中

小間使い_客間女中

イギリスの歴史の中で、メイド(使用人)とはお屋敷の主人の代わりに家事を行う女性ではなく、様々な職種に分かれてお屋敷の一切を切り盛りする人々のことでした。
『図解 メイド』(池上良太 著)では、ヴィクトリア朝を中心とするメイドの仕事内容や生活、当時の歴史的背景などの他、細分化されたメイドの職種についても解説しています。今回はその中から、小間使い(レディーズメイド)と客間女中(パーラーメイド)についてご紹介します。

目次

華やかで役得も給料も多いが、気苦労も多い小間使い

小間使い(レディーズメイド)は、女性使用人の中で家政婦(ハウスキーパー)に次ぐ高い地位にある職業です。
主な仕事内容は女主人の身の回りの世話をすることです。彼女たちは朝早く起きて女主人が着るドレスや帽子、靴などを整え、女主人の身支度を手伝います。外出の際にはお供をし、女主人が快適に過ごせるよう、あれこれ気を配ったり話し相手になるなどしました。 また、女主人の衣類や装飾品、化粧品を管理したり、衣類を繕い直すことも仕事のひとつです。そのため小間使いには裁縫の技術や薬品知識、人間性が誠実であることが求められました。

小間使いになるには、若くて外見がよく、性格も明るくて従順で、気立てがよい人物であることも大切なポイントです。女主人の身支度に関わる仕事のため、フランス人やスイス人の女性もファッションセンスがあるとして好まれていました。また、基本的な教養があり陽気で話しやすいことも重要です。
18世紀頃まで、小間使いは上流階級出身の女性が務めるものとされていました。そのため19世紀のヴィクトリア朝の頃も、他の女性使用人に比べて裕福な家庭出身の女性が多かったようです。

小間使いは基本的に若い女性の仕事で、他の女性使用人とは違い、掃除や料理の専門的な知識も技術も求められません。年を取れば首になることもある上に、他の使用人から「大した技術も持たないくせに」などと蔑まれ、煙たがられることもありました。
しかし一方では、小間使いは女主人直属の華やかな職業で、制服ではなく女主人のおさがりのきれいな服を着ることができるなど役得も多く、また給料も良かったため、小間使いに憧れる女性使用人も少なくありませんでした。
気苦労も多く雇用が不安定ではありますが、その分、華麗で陽のあたる職業だったというわけです。

小間使い_客間女中2
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メイドの花形 客間女中の採用条件は手がきれいなこと

客間女中(パーラーメイド)はヴィクトリア朝後期になって登場する、使用人の中でも比較的新しい職業です。産業が発達し中流階級が増加する中で、従僕(フットマン)や従者(ヴァレット)といった男性使用人を雇うだけの金銭的余裕のない家庭で多く雇用されるようになりました。
それゆえに、「客間女中を雇うような家には行きたくない」と揶揄されることもあったようだ。 『図解 メイド』p.100
客間女中は接客や給仕に特化した職種で、元来は従僕などの男性使用人が務めていた仕事の一部を担当します。たとえば、来客対応や取次ぎ、お屋敷の案内、主人への手紙の受け渡しをしたり、食事の際に準備や給仕を行うといった内容です。

他人の目に触れる機会の多い仕事のため、客間女中は他の使用人よりも華美な制服を身につけていました。
また、外見がよい者が採用されるという点も特徴です。背の高さや、給仕の際に客に手を見せる機会が多かったため、手がきれいなことも重要でした。さらに、ある程度要領よく給仕を行えなければなりません。

今回ご紹介した職業は、どちらも女性使用人の職種の中でも他人の目に触れる機会の多い仕事です。 ひとくちに使用人といっても、小間使い客間女中のように外見が重要視されるもの、前回ご紹介した女家庭教師のように教養が必要なものなど、求められる能力は様々でした。もし自分が使用人になるなら、どんな職種が合いそうか考えてみるのも面白そうです。

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本書で紹介している明日使える知識

  • 家事使用人の主な雇用者
  • メイドの制服の成立
  • 執事
  • 使用人の結婚と恋愛
  • 使用人と病気
  • etc... 






ライターからひとこと

容姿端麗なだけでなく、手がきれいなことが条件というのは、当時のイギリスならではの考え方で面白いですね。本書では他にも様々な使用人の職種を紹介しています。他にも、現代ではちょっと見かけないような条件が必要な職種も掲載されていますので、ぜひ一度読んでみてください。きっと驚くと思いますよ。