【怖い話】憑いてくるもの


【パンタポルタ・ホラー企画】
※閲覧注意!
このお話を読んだことにより何らかの異変が起こっても、パンタポルタでは責任を負いかねます。自己責任でお読みください。
それは神様なのか、悪霊なのか……? 中出幾三さんからよせられた怖い話です。




私の通っていた中学に、白石さとみ(仮名)という生徒がいました。 一つ上の先輩で、見た目の良さと社交的な性格のおかげで周囲からの人気も高く、学年の違う私でも知っている生徒でした。 ある日を境に彼女が突然学校に来なくなりました。 噂によると、付き合っている男との間に子どもができたらしく、堕胎手術後に、秘密が校内で漏れてしまって来れなくなったそうです。 相手は有名な不良でした。両家の話し合いの際にも突然キレ出し、さとみの父親を何度も殴りつけ警察沙汰になったとかなんとか。 まあ、あくまで噂話です。 ただ、気になる話もありました。 なんでも、さとみの堕胎を担当した産婦人科医が失踪したとのことです。 大して関連性の無い話題だったので、逆に私は興味を抱きました。 近所の産婦人科医が失踪したのは、たしかに事実です。その人がさとみを担当したかどうかは出所のわからない情報でしたが。 そもそも、なぜ、こんな話も一緒に広まったのか。 噂の発生源は、例の男子高生と同じ高校に通う兄をもつ、さとみの同級生の女子生徒でした。 彼女が兄から聞いたという話はこうです。 その日、男子高生とさとみは、県道沿いにある廃ホテルを肝試し目的に訪れていました。そこは山の神様を祀る祠を壊して建てられたことから、呪われた心霊スポットとして有名な場所です。 二人は中を探検しましたが、それらしい霊的現象には遭わず、ガッカリしていたそうです。そこでそのまま帰ればいいものの、豪胆にも、その場所で行為(察してください)をしたのだとか。 男子高生は、そのことを学校で自慢気に話していたそうです。 これを知った女子生徒は、さとみはその時に山の神の子を孕んだと妄想したようでした。だから、堕胎手術を担当した産婦人科医は呪われ失踪したのだと。そして、呪いはまだ続いていて、関係者はみんな不幸になる、と。 あまりに荒唐無稽な話に、私は笑いました。 ですが、驚いたことに、この女子生徒の妄想を真に受ける生徒が多かったのです。男子高生が本当に行方不明になった時など、ちょっとしたパニックすら起こりました。冷静に考えれば、素行不良な者が家出しただけだとわかるものなのですが。 それからしばらく経ち、私が中学三年生になった時のことです。 ちょうど本格的な寒さがやってきそうな季節の変わり目、私は体調を崩し保健室で寝ていました。 じっとベッドで横になっていると、誰かが入ってきました。 「先生、久しぶり!」 「あら、さとみちゃん! 久しぶり!」 やってきたのは、さとみでした。中学を卒業後、進学をせず働いている彼女が、保健のおばさん先生に会いに来たのです。 先生は女子から慕われている立場だったので、さとみとも交流があったのでしょう。特に彼女の抱えていた問題を考えると、その関係性は強かったはずです。 あんなことがあったのに、さとみはとても元気でした。 二人の会話をカーテン越しに聞いていると、ふいに誰かが近くに立っているのを感じました。 いきなり現れた気配に、私は恐怖を抱きました。 絶対に目を開けてはいけない、なぜだかそう思い、固く目を閉じていました。 生臭い息が私の顔にかかります。顔を近づけて私を見ているのだとわかりました。そいつはブツブツとなにかを小さな声で呟いています。これも直感的に意味を理解しようとしてはいけないとわかりました。 声を出して助けを呼びたい気もちで一杯でしたが、それもいけないことだと私は思いました。理由はわかりません。ただ、いないものとして振舞うのが正解だと考えていたのです。 そうやって我慢していると、やがて、さとみが帰る気配を見せました。そして、彼女が去るのに合わせて、何者かも私から離れます。 私は、そっと目を開きました。 そこにいたのは、男でした。くすんだ緑色の着物を着た男性の背中。一目で生きた人間ではないとわかりました。その男性の首は、異様に細長く、また頭が鈍器で何度も殴られたように凹んでいたからです。 男は、スーっとカーテンを擦り抜けて消えました。 まさか、例の噂は本当だったのか? 解放された後も、私は恐怖で身動き一つ取れませんでした。 このさとみに憑いていると思われる山の神様? の話はこれだけではありません。続きがあります。 恐怖も薄れつつあった、高校生の時の話です。 休みの日、私は友人の家に泊まっていました。 八畳間の部屋に集まったのは計五人。ゲームをしたり彼女の話をしたりして盛り上がっていました。それから、怖い話をしようということになりました。 言い出しっぺが父親の同僚から聞いた話を披露し、次に私が保健室での一件を少し誇張しながら話しました。 すると、友人のAが、真っ青になりながら震えだしたのです。 ビビりすぎだろ、と私は笑って茶化しましたが、どうにも様子がおかしい。宥めつつ理由を聞くと、私は凍りつきました。 なんと、Aが最近付き合っていた彼女が、さとみらしいのです。 彼女の不思議な言動からして、間違いないとのことでした。 「私にはね、凄く強い守護霊が憑いているんだよ。たぶん、神様だと思う。だから、もしA君に誰か呪い殺したいやつがいたら教えてね」 そんな彼女の言葉を、Aは馬鹿にしながらも否定することなく適当に受け流していたそうです。多少おかしいところはあるが、性格は明るいし、なにより可愛い。すぐに切るほどのものではないと考えていました。 ですが、ある日のこと。Aの自宅で行為をした後、Aは彼女がいる前で眠ってしまいました。すると、なにか異変を感じます。薄っすら目を開けると、目の前には自分を覗き込むさとみの姿がありました。彼女は白目を剥きながら、早口で「×××~×××~」と呟いていたそうです(実際になんと言っていたかは念のために書きません)。 Aは恐怖で硬直し、寝ている振りをしたそうです。さとみはそれからもずっと「×××~×××~」と呟いていましたが、やがて部屋から出ていきました。 あれから、さとみとは一切会っていない、とAは話を締めました。 そして、「別人じゃないよな?」と、さとみが写っている写メを見せてきました。 間違いなく、それはさとみでした。 私がうなずいた時です。 ドンドンドンドンドン! 突然、部屋の窓が凄い勢いで叩かれました。 友人の家は一軒家で、部屋は二階。誰かが登ってイタズラすることも可能な構造です。ですが、私も含めて、誰もが生きた人間の仕業だとは思いませんでした。 カーテンの向こうで、窓は割れそうなばかりに叩かれ続けます。 窓を叩いている何者かは、怒っているように感じました。 私たちはAを見ます。理由はわかりませんが、怒りの対象はAだとみんな考えていました。 Aの方も自覚があるのか怯えきっていて、頭を抱えて丸くなり「助けてくれ~勘弁してくれ~」と繰り返していました。 どれほど時間が経ったのか、気がつくとカーテンの隙間から光が差しています。朝になり、窓を叩く音も消えていました。その間、まるで示し合わせたようにA以外は一言も発さず、身じろぎ一つしなかったことが記憶に残っています。 私たちは無言のまま解散しました。 家に帰り、私は仏壇のある祖父母の部屋に留まりました。 夜になると、Aから電話がかかってきました。 「来た」 その一言で、全てを察しました。 「大丈夫か?」 「わからん。家の階段を上っていたら、廊下にあれが立っていた。おまえの言うように緑の着物を着ていて首が長い男だった。顔も見た。顔は×××~だった」 「大丈夫か?」 「わからん。……どうしよう?」 どうしよう? と聞かれても私にできることはありません。ただ、Aは危険な状態にあると思ったので、まずご両親に事情を説明し、お寺でお祓いをしてもらうよう伝えようとしました。 神様なら、近隣の神社に行くのがいいかもしれないとも考えたのですが、私にはどうしてもあれがなんらかの神様だとは思えなかったのです。 でも、その言葉を私は飲み込みました。 電話口の横から、ザザ……ザザ……とノイズが聞こえます。 それと小さく呟く声。 「……ァァ……×××~×××~」 あれは、まだAのすぐそばにいるのだとわかりました。 この会話は聞かれている。Aを助けるようなことを言えば、今度は自分がターゲットになるかもしれない。そういう悪意を感じました。 だから私は、こう叫びました。 「どうしようって知るか! おまえに憑いたもんやろうが! おまえがなんとかせえや!」 そして、Aが何かを言う前に通話を切りました。 祖母が、「あんたどうしたん? 顔真っ青よ?」と聞いてきましたが「なんでもないわ!」と乱暴に返すことしかできませんでした。 私は自分が助かるために、Aを見捨てたのです。 休み明け、学校に行くとAは私と目を合わせようともしませんでした。私だけでなく、周りのみんなを無視しているようで、すぐに学校にも来なくなりました。 罪悪感はありましたが、私も必死だったのです。 学校に来なくなったAは、他校の不良とつるむようになりました。最後に聞いた話では、無免許運転で事故を起こし、寝たきりになったそうです。 それがあれと関係があるのかは定かではありません。 ただ、Aは常になにかに怯えているようだったとも私は聞いていました。 改めて考えてみると、やはりあれは神様ではないと思います。 もっと身近にある人間的な悪意の塊、端的に言ってしまえば、悪霊の類だと私は考えています。 実際、譁�ュ怜喧縺代→縺ッ縲∵悽譚は繝舌き縺ェ縺ョ?。 もしこの話を読まれてなんらかの異変があった方は、同じように繝翫Ν繝医√ヤ繧、繝、繝・メ繝」繧ヲ繝ウ繝竏ォ欝縲舌≧・舌Μ遺す。


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