住人に余裕あるライフスタイルを提案――異世界の生活を改善する「チート」

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本コラムは『現代知識チートマニュアル』(山北篤 著)をひもとき、もし明日異世界に転生したとしても生き残れるよう、「チート」知識を身につけるためのコラムである。

前回のコラムでは、砂糖菓子や娯楽を異世界の住人たちに提供し、小金を稼ぐ「チート」を紹介した。しかし同時に、生活時間≒労働時間の図式が成り立つ異世界では、教育に費やす時間や資金の余裕がないことも判明した。そこで今回は、異世界の庶民たちの生活を改善し、余裕あるライフスタイルを送ってもらうためのチートを紹介したい。

目次

馬鹿にならぬ水汲み労働――「井戸」と「手押しポンプ」で負荷を軽減

水は、人間の生命維持に欠くことのできない存在である。現実世界においても、人間文明の興りは大河の側であるし、災害時にまず確保しなければならないのは飲み水だ。 

異世界においてもそれは同じことで、住人たちは水を確保するために毎日大きな労力を割いていることだろう。その世界が中世ヨーロッパ程度の技術レベルだと仮定すると、水の確保には「井戸」が用いられている可能性が高い。

井戸は、『現代知識チートマニュアル』の140ページから、その種類や活用法について詳しく書かれている。もし井戸が存在しない世界だったら、143ページから始まる「井戸掘り」を参考にして、井戸を掘るところから始める必要がある。だが、これには多くの労働力もしくは高い技術力と特殊な材料が必要となる。 

もし井戸が存在しているならば、ぜひ「手押しポンプ」で井戸を改善したい。手押しポンプについては142ページから、その構造と作り方が載っている。水圧・空気圧という中学生レベルの物理学さえわかっていれば構造は理解できるはずなので、後はその通りにポンプを作るだけだ。これまで蓄えた資金と人脈があれば、たやすいことだろう。 

手押しポンプの井戸になれば、水汲みに必要な力と時間が大きく改善される。これで少しは、集落に余暇が生まれることだろう。

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水の次は食料だ!「モールドボード・プラウ」で農作業を劇的に改善

食料生産も、水の確保と同じく、人の生活には必須事項である。食料の大量生産・大量加工ができるようになるのは、歴史的に見るとごく最近のことであり、それまでは人口の多くが食料生産、特に農作業に従事していた。あなたが転生した異世界も、おそらく同じであろう。

農耕は重労働であり、時間や労力を軽減するために多くの農機具が発明されてきた。中でも馬や牛などに引かせて土地を耕す犂(すき)は古い歴史があり、紀元前から使用されていたという。その後様々な改良が施され、ついに完成形とも言えるモールドボード・プラウが6世紀ごろ、中国で発明された。モールドボード・プラウは、一度に大量の土を耕すだけでなく、刃を地面に大きく食い込ませることで、下層の栄養豊富な土を表面に掘り起こすという機能を持っている。 

だがモールドボード・プラウは、時代がかなり下るまでヨーロッパには伝わらなかった。最初にオランダに伝わったのは17世紀で、なんと1000年以上も後のことである。 

もしこのモールドボード・プラウが君の転生先になかったら、それは大きなチャンスとなる。詳しい機械の知識も要らず、特殊な材料も必要ない。『現代知識チートマニュアル』の196~197ページを見れば、簡単に作ることができるからだ。 

モールドボード・プラウがあれば、労働時間の短縮だけではなく、生産量も増加する。『現代知識チートマニュアル』によれば、ひとりあたりの生産性が倍ほどにもなるとのこと。住人たちのあなたを見る目は、これによって「外から来た面白い人」から「奇跡の実りをもたらす異邦人」へと変わるだろう。1000年後の異世界であなたの名前は偉人として伝えられているかもしれない。

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手がかじかんでは勉強できない! フランクリン・ストーブで部屋を暖かく

水周り・食料周りを改善して、住人たちの労働時間はずいぶん減ったはずだ。収穫量も増えているので、資金的にも余裕があるかもしれない。これで、少しは教育に費やすことができるようになるだろう。教育は、あなたの懐を潤すだけではなく、人間の知的レベルを引き上げ、文明自体を新たな進化へと導く大きな推進力となる。ぜひとも注力したい。

ここで、話は少し本題からずれるが、あなたが勉強中に最も辛かったことはなんだろうか。空腹や遊びの誘惑、騒音などいろいろ思いつくだろうが、私にとっては勉強中に手が寒さでかじかむことだった。手がかじかむと鉛筆をうまく持てず、勉強どころではなかった記憶がある。 

ほんの数十年前の日本でもそんな状態だったのだから、転生した先の異世界でも寒さは生活の大敵だろう。寒さが厳しいところでは、勉強の敵どころの話ではなく、命をも落としかねない脅威となる。 

そこで、『現代知識チートマニュアル』146ページを見て欲しい。この「ストーブ」の章には、いくつかのストーブが紹介されている。その中から、今回は「フランクリン・ストーブ」を作ってみよう。

フランクリン・ストーブの「フランクリン」とは、凧を用いて雷が電気であることを証明したベンジャミン・フランクリンを指す。このストーブは、ベンジャミン・フランクリンの数ある発明の内のひとつなのだ。 

薪を燃やすと、炎自体から熱が出るほかに、燃焼性の揮発成分が出る。だが、従来の暖炉やストーブでは、この揮発成分は煙突から排気されてしまう。この揮発成分を活用するのがフランクリン・ストーブである。 

フランクリン・ストーブの構造は、アルファベットの「U」字型をしている排気口が特徴的だ。一度上昇した揮発成分を炎の上部に集め、それを燃焼させることで熱を発生させる。この熱によって部屋が暖まるという寸法だ。従来の暖炉と比べると、燃料に対する熱の効率はなんと4倍にも達する。 

このストーブの良いところは、従来の暖炉に少し手を加えるだけで、同じ構造を持たせられる点にある。不燃性の「衝立」と「簀の子」を作ればもう完成だ。これで、子どもたちも暖かい部屋で勉強することができるようになるだろう。 

もしこのストーブの商品化を狙うのであれば、「フランクリン」の部分を自分の名前にするなどしてみるのもひとつの手だ。もちろん、ベンジャミン・フランクリンに敬意を払い、そのままの名前で流通させても良い。その場合は、ベンジャミン・フランクリンが「電気と雷」ではなく、「炎と熱」の神様として異世界の住人に崇められることになる――かもしれない。

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ここまでの君の活躍で、食料と水が行き渡り、娯楽や菓子も存在し、教育も始まった。この世界はずいぶん暮らしやすくなっただろう。

次の機会があれば、さらなる異世界の改善と、改革の知識について紹介したい。我こそ異世界に転生せん、と志す者は、ぜひその時までに『現代知識チートマニュアル』を熟読されたい。